PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

日日是好日

女性が大好き夏子ちゃんと
夏子が大好きタイムちゃんの
愛とか恋とか捻くれ曲がっちゃって
されどソレなりにかけがえのない大切な日々の情景


関連キャラクター:タイム

チョコレイトは熱で溶ける
 ――ハダカの私を、アナタで包んで。

 練達の繁華街、一人ショッピングを楽しむタイムは耳に飛び込んで来たキャッチコピーの大胆さに思わず顔を上げた。
 見上げたビルの大型ビジョンには、細く焼き上げられた生地がチョコレイトをゆるやかに纏っていく姿が流れている。
 砕かれたナッツ、雪のように降る粉砂糖で次々と彩られていくその様はまるで魔法をかけられドレスで着飾るシンデレラ。
 出来上がった菓子を男性の俳優が手に持ち、女性の口へ。そして、反対側を自分の口へ。
 見つめ合いながら両端から食べ進めると二人の距離はその分近づいていく。
 唇と唇が触れ合う瞬間、息を呑み見守ればビジョン一杯に映し出されたのはお菓子のパッケージ。
 どうやら新商品の広告らしい。
 しかも、今日が発売日。
 繰り返し流れる広告をタイムは齧り付く様に二巡、三巡は見ていただろうか。
 徐にくるりと踵を返す。
 行く先は勿論、お菓子屋さんだ。

「で、買ってきたお菓子がそれってワケね〜」
 無事手に入れた新商品の箱を両手に持ち、ふんすふんすと息巻きながら街頭宣伝の内容を説明するタイムに夏子は肩肘をつきながら苦笑する。
 夏子と言う男はいつだって軽薄だ。
 否、本人的には至って真面目なのだが、そう見られがちであると言うのが正しい。
 そんな中でもタイムにとって最も重要といえるのが彼の女性との付き合い方だろう。
 これまで幾度「よそ見をするのはやめてよ」と言っただろうか。
 それでも、そんな夏子の側にも変化はあるのだ。
 今までであればそんな会話は上手く丸め込みチョチョイのポーンで女性をベッドに誘っていた夏子だが、こうしてタイムの『如何に宣伝がドラマティックだったか』トークを大人しく聞いているのだって苦ではない。
 夏子とてタイムを悲しませたい訳ではないのだ。自分といる事で楽しそうにする彼女を見るのは、まんざらではない。
 夏子はそんな自分の変化を誤魔化す様に「ンッンー!」と咳払い一つするとタイムの持っていた菓子箱をひょい、とつまみ包装を開けて彼女の口に菓子を一本放り込む。
「タイムちゃん知ってる? 綺麗に着飾っても、さ? シンデレラの魔法って0時で解けちゃうらしいよ?」
 気付けば時刻は"丁度"魔法が解ける直前。
「それに毎度ご愛顧頂いて居るタイムちゃんもご存知の通り、ボクチャンあれこれトッピングするよりも……素材の味を大事にする方だからサ!」
 タイムの肩にすすす、と手を伸ばす夏子の目が菓子で突かれるまで、あと2秒。
 その後魔法が解けたのかどうかは、二人だけが知っている。
執筆:百万石

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