PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

日日是好日

女性が大好き夏子ちゃんと
夏子が大好きタイムちゃんの
愛とか恋とか捻くれ曲がっちゃって
されどソレなりにかけがえのない大切な日々の情景


関連キャラクター:タイム

朝は星を食べてしまった
 白み征く空が夜を食んだ。開け放った窓から吹き込んだ初夏の風は湿っぽい。この空気では髪は上手く纏まらないだろうか。
 瞼を押し上げて、朝と呼ぶにはまだ早すぎた空気をすうと飲み込んだ。呼気に混ざり込む草の香りは心地よい。早起きには三文の得と言うけれど、お得だった試しは最近合っただろうかとタイムは独り言ちてからドレッサーの前に立った。
 何となく、香りが心地よかったからと購入した化粧水に「良い香りだ」と褒められたくて少し奮発ヘアオイル。それから――視線を落としてから木箱に仕舞い込んだ星を象った髪飾り。

 ――いいじゃん、似合うと思うよ。粗品で貰ったんだよね。

 そんな彼のことを思い出してからタイムは「何よ、粗品って」と唇を尖らせた。何処かの店で貰ってきたと夏子が行った星が連なったヘアゴムは少し子供っぽいテイストであった。
 何処で貰ったのと聞けば彼は「んー」と何となく誤魔化したように笑う気がして、問い掛けないまま仕舞い込んだ。
 ノック数度の音の後、タイムは適当なカーディガンを肩に掛けて扉を開いた。黒狼隊で使用する屋敷の個人用居室は来客も忙しない為にこんな時間に誰だと問う事もしない。
「や」
「……おはよう?」
「いーや、今から寝るんだけどさ。タイムちゃんって星は好き?」
 突拍子もない、とタイムは唇を尖らせて――それから掌にころんと転がされた金平糖入りの瓶に眉を吊り上げた。
「また粗品?」と尖った声音に夏子は「お土産」と其れだけ返して目を眇めた。「疑った?」なんて、軽い言葉は何時も通り風に吹かれた羽のよう。
「だって、何時も粗品だって言うでしょう?」
「美味しそうだし可愛かったからさ、お土産」
 タイムは俯いてから「ありがとう」の五文字をやっとの事で紡いだ。それじゃあと扉を閉めようとして夏子の指先が髪を掬い上げたことに気付く。
「タイムちゃんの髪ってふわふわしてて美味しそうだよね。金平糖でデコレーションすると美味しそうだと思わない?」
「……どういう意味?」
「星の髪飾り、付けてみなよってこと。可愛いと思うよ。マジマジ」
 笑った彼にタイムは「気が向いたらね」と返してからドレッサーに跳ねるような足取りで向かった。
 ――ああなんて、乙女心は直ぐに踊ってしまうから! 粗品だって何だって朝が来れば都合が良いことだけ覚えて居られれば良いのだもの。

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