PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

日日是好日

女性が大好き夏子ちゃんと
夏子が大好きタイムちゃんの
愛とか恋とか捻くれ曲がっちゃって
されどソレなりにかけがえのない大切な日々の情景


関連キャラクター:タイム

花言葉は一つじゃ無い
 雨がしとしと降る梅雨の一日。
 タイムと夏子は傘を差しながら雨に濡れる街を歩いていた。二人で他愛無い世間話に花を咲かせていると、夏子の足が突然止まる。釣られてタイムも足を止めた。

「夏子さん、どうかしたの?」
「いいモン見つけちった。タイムちゃん、ちょ~っと待ってて」
「うん」
 夏子の大きな背中を目で追いかけると、どうやら花屋に入った様だった。何の用事だろうと疑問に思いつつ、タイムが暫く水溜りに映る自分の顔と睨めっこしていると「ありがとうございました」と店員の明るい声が聞こえてきた。
 店から出てきた夏子はその腕には何か抱えている。
 
「タイムちゃんお待たせ~、はい、これどうぞ」
 にこにこと夏子がタイムに差し出したのはピンク色の紫陽花だった。
 この季節を象徴する美しい花はプレゼント用にラッピングされていた。タイムの為に買ってきたらしい。
「……ありがとう」
 しかし受け取ったタイムの顔は少し寂し気だった。それは雨の所為ではないだろう。
 ぱちくりと左目を瞬きさせた夏子が首を傾げる。
「あれぇ、タイムちゃん不満げ? もしかして紫陽花キライだった?」
「ううん、紫陽花は好きよ。とっても綺麗。綺麗だけど……」
 好きな男性に花を贈られて嬉しくない訳はない。
 思い付きしろ、自分を喜ばせようと選んでくれたのだ。その心遣いはとても嬉しい。
 まぁ、夏子はどの女性にでも花を贈りそうだが此処では一旦おいておいて。

(でも、紫陽花かぁ……)

 紫陽花の花言葉には有名なものがある。
『移り気』『浮気』
 色が時期や場所により変わる様からつけられたとされるこの花言葉は決していい意味ではない。
 タイムはソレを知っていたので内心複雑だった。
 美しい女性を見る度に鼻の下を伸ばす夏子に呆れることは多々あれど、この想いが移りゆくことなど無いというのに。
 夏子はもしかしたらこの事を知らなかったのかもしれない。気持ちは嬉しいが、と前置きしタイムは眉根を寄せる。
「夏子さん、あのね……紫陽花には」
「タイムちゃん、タイムちゃん」

 タイムに呼びかけるどこか楽しそうな夏子の声に釣られて顔を上げれば、ニンマリ顔が一つ。
「タイムちゃん、なんで紫陽花には白とか青とかあるなかで、ピンクのヤツにしたと思う?」
「えっ?」
 きょとんとするタイムの長い耳元に顔を寄せて夏子はぼそりと呟いた。
「ピンクの紫陽花の花言葉はね」
 ――元気な女性、強い愛情。
 ね、タイムちゃんにぴったりでしょ?

「それに色も可愛くてタイムちゃんによく似てるしね」
「かわっ」
 ぼんっと耳まで真っ赤に染まったタイムを見て「ああ、やっぱりぴったりだね」なんて夏子は笑った。
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