幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
日々のかけら
日々のかけら
関連キャラクター:ニル
- 特別賞!
- ●キラキラをみんなへ
キラキラ大会は、歓声とともに幕を閉じた。
「どうしたの、ニル」
それなのに何故だかニルが元気がないように思えた雨泽は、元気がないねとニルへ声をかけた。あんなに美味しそうにご飯を食べてたのに、どうしたの?
「雨泽様、ニルは……」
目的通り、ちゃんとイレギュラーズが優勝した。
けれどもニルはと視線を向けるのは、大会の運営テント。
いやー、盛況だったね。皆楽しんでくれてよかったね。そんなことを笑顔で話す運営側の人たち。ひとつのことをやり遂げた彼等の笑顔はキラキラだ。
「みんなキラキラじゃ、だめなのでしょうか……?」
雨泽には辛かったけどニルにはおいしかった料理を作ってくれた人も、皆が楽しめるようにと盛り上げてくれた司会の人も、計画して場を整えてくれた大会の人も、みんなみんなキラキラだとニルは思うのだ。
ニルの視線を追った雨泽がそうだねぇと相槌を打った。
「それじゃあニル。みんなにキラキラニル賞をあげない?」
「キラキラニルしょう、ですか?」
「ニルがキラキラだと思う人にあげるの」
折り紙は折れる? 折れなくても教えてあげると、雨泽が手招いた。
まずは練達へ行く。
そこで金色の折り紙を沢山買って、キラキラ光るお星さまを折るのだ。
雨泽が丁寧に折り方を教えれば、ニルは懸命に彼の手元を覗き込んで色紙を折った。最初はちょっとぐんにゃりしたり角が綺麗じゃなかったけれど、『誰かにあげるもの』とニル心を籠めて何度も挑戦した。
「できました!」
金色の折り紙で折った、キラキラでピカピカのお星さま。練習の甲斐があってか、ニルはとても満足だ。お星さまの裏へリボンをつけて首から下げれるようにしたキラキラニル賞の賞品を掲げたニルへ、雨泽からも「上手上手」と拍手が送られる。
リボンの色はそれぞれ違う。渡す相手に好きな色を選んでもらうのだ。ニルらしい優しい気遣いだねと雨泽に褒められて、ニルは嬉しくなった。
「……よろこんでくださるでしょうか」
「あれ。不安になってきちゃった?」
みんなにキラキラを贈りたいという気持ちは本物だ。
けれど、でも……なんて思ってしまう。
「大丈夫だよ、ニル。ニルが用意したキラキラをきっと喜んでくれるよ」
そうだと閃いた雨泽が「最初はご飯を作ってくれた人と食材を提供してくれた人のところへ行こうよ」と提案をする。ニルはパッと顔を輝かせる。『おいしい』ご飯を作ってくれた人たちへ、お礼を言いたい!
「行こう」
「はい、雨泽様!」
ニルはたくさんのキラキラのお星さまを抱え、地を蹴った。
キラキラの笑顔とともに、みんなへキラキラを贈るために。
――――
――
「あれ、ひとつ残っちゃった?」
キラキラニル賞のお星さまを配り終えたけれど、ニルの手にはひとつお星さまが残っていた。
けれど、いいえと雨泽へ首を振る。
「これはニルのたいせつでだいすきなともだちにあげるのです」
大切で大好きな友達も、勿論キラキラだ。
キラキラすぎる、ニルの一等星。
いつも感謝と大好きな気持ちを伝えているけれど、もっともっと伝えたくて。だからこそこれも、とニルは思うのだ。
「よろこんでくれるでしょうか……?」
ニルの問いへ、雨泽は会場では見せなかったような笑顔を返した。
だってそんなの、考えるまでもないことじゃない? - 執筆:壱花