幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
日々のかけら
日々のかけら
関連キャラクター:ニル
- 僕の『かみさま』
- ●
世界の殆どは、白かった。
ほんの僅かな春と夏には緑。けれど山々は白。秋と呼ばれる季節にはもう白い雪が空から降ってきて、あっという間に世界を白く染めてしまう。
白い世界には食べ物を得るすべが無くなってしまうから、短い春から秋の間に何とか蓄える。干し肉やチーズと言った保存食を作り、細々と冬を過ごす。冬のための手伝いも沢山した。僕等は寒さには強い方だから、雪が降っても枝を集め、過ごしてきた。
けれどもある年のことだった。『ききん』と呼ばれるものだと大人たちが言っていた。
秋の実りが無く、あっという間に食べ物が尽きた。
食べれるものは何だって食べた。木の皮も、根っこも……だから、燃やすものが無くなった。
農具の柄も倉庫も家も、資材となった。弱っている人たちから倒れて行って、最初は埋めていたけれど、それもできなくなった。埋める穴を掘っている間に、自らの命も失いかねない。埋めることも燃やすこともできず、ただ外へ並べた。
人が死んでいく。
色んな感覚が死んでいく。
悲しみも、どんどん薄れて……
僕は父さんと母さんと…………
……地下に……隠れて…………
…………食べ…………もう……
…………………………
………………
「……?」
ある日、光が、さした。
眩しくて眩しくて、僅かに目を開けた。
「おや」
眩い光とともに声が降りてきた。
光の中から現れた黒い髪の『かみさま』は「もう大丈夫ですよ」と僕を温めてくれた。 - 執筆:壱花