PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

日々のかけら

関連キャラクター:ニル

恋華の雫、幕間

「日持ちのするおかしはありますか?」
「それならこれはどう?」
 甘い香りにつられて覗いた屋台は、甘い甘い砂糖の香りに満ち満ちて。
 店主がどうかと勧めるのは――小さめの瓶に入った白い紙を捻って包んだお菓子。中身と紙が合わさって、ミルクティーのような色合いが見えた。
「キャラメル、ですか?」
「そうだよ。甘くて美味しいよ」
「では、一瓶ください」
 店主へと手を伸ばして対価を払おうとして、ニルは「あ」と手を止めた。
「……こちらの少し色の薄い方も一瓶、ください」
「こっちはミルク多めのだけれどいいかな?」
「はい、大丈夫です」
 ひとつはまだ遠出が出来ずに豊穣で安静にしている雨泽に。これを持ってまたお見舞いにいくのだ。明日からは12月だから、アドベントカレンダーの一個目を一緒に開けるのだっていい。楽しいことを考えると、コアがふわふわとする。悲しくない、楽しい気持ち。ニルは楽しいと嬉しいは大好きだ。
 もうひとつは――ミルクティー色がまなうらでピョンと元気に跳ねたから。
(きっとこれも『おいしい』です)
 ハーミルはお茶会で甘いものばかり口にしていたから、きっとこれも口にあうことだろう。
 渡す機会はないかもしれないが、機会はいつ巡ってくるかわからない。
「あ。そろそろ時間でしょうか」
 良かったら皆で合流して色々食べよう。そうサマーァが提案していたのだ。
 小さな小瓶をふたつ鞄に詰め、ニルは温かな明かりの下で駆け出した。皆とおいしいを楽しむために。
執筆:壱花

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