幕間
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メイメイと。
メイメイと。
関連キャラクター:メイメイ・ルー
- 花びらをあなたと
- ●
――ねえメイメイ様、わたくしお願いごとがありますの。
メイメイの友人は何かしてほしいことがある時、大抵そんな風に呼びかける。両手の指を組み、蜂蜜色がキラキラとメイメイを見上げ、『お願い』のポーズも欠かさない。……きっとこうすればメイメイは首を縦に振ると解っていてそうしているのであろうことをメイメイとて解っている。解ってはいるが……大抵は可愛らしい簡単なお願いごとであるし、少し難しいものだとしてもメイメイがちょっと恥ずかしいのを我慢したりする程度の、無理な願いごとはせず、押せば折れてくれそうなものばかり。
だからメイメイは此度も首を縦に振った。
――はい、アラーイスさま。豊穣でお菓子を買ってくれば良いのですね。わかりました。
ラサから豊穣は遠くて、アラーイスは行ったことがないそうだ。けれども豊穣のことをメイメイがよく口にするから興味を持ってもらえたのだと、嬉しくて。
「アラーイスさま、このお餅でよかった、ですか」
「まあ。本当にお早い。そう、そう。ええ、きっとこれです」
では行ってきますねと出ていったメイメイが一時間もしない内に戻ってきたものだから、アラーイスがすごいと手を合わせて瞳を輝かせた。そんな反応が少し微笑ましく、そしてくすぐったくて。メイメイははにかみながら花弁めいた甘味をテーブルへと載せ、アラーイスが可愛らしい皿に餅を移した。
「豊穣では新年にこのお菓子を頂くのだと聞いて、メイメイ様と食べたいと思いましたの」
「桃色の花弁のようで可愛いから、でしょうか?」
アラーイスの持ち物は桃色のものが多いため、好きな色なのだと思っているメイメイはくすくすと笑った。
けれどもアラーイスは、ふるりとウェーブかかった髪を揺らす。
「豊穣の食べ物には意味や願いを籠められたものが多いそうですね?」
「はい。おせちとか、そう、ですね」
「これは長寿を願うお菓子なのだそうです」
「アラーイスさま……」
メイメイは牛蒡の覗く花弁めいた薄紅色の求肥と、眼前の少女とを交互に見た。彼女は眩しいものを見つめるように微笑んでいた。
アラーイスは、吸血鬼(ヴァンピーア)だ。
そしてその種は長命種なのだ。
「ねえメイメイ様」
アラーイスは『お願いの言葉』を唱えた。
「長生き、してくださいませ」
ね、と微笑んだアラーイスは頂きましょうとメイメイを促し、花びら餅へと黒文字を刺した。
ずっと側にいてくれると言ったのだから、早くにわたくしを置いて逝かないでください。
ねえ、メイメイ様? - 執筆:壱花