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幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

ブルービート・ダイアリー

関連キャラクター:イズマ・トーティス

風の丘で
 その日、イズマが散歩で訪れた先は風が良く通る場所だった。
 少し息を切らせながら小高い丘を登りきり、吹き抜ける風と足元の緑が運ぶ爽やかな匂いを堪能する。
 眼下には町が見えて、たくさんの人が行き交う様が忙しなく映る。
(丘の上と下でこんなに違う……)
 町と丘はそんなに離れていない。
 それでも、道のりの険しさから訪れる人は少ないらしい。
 なんだか不思議と高揚するような、絶景を独り占めしている気分になってくる。
「何か楽器を持ってくれば良かったな……」
 こんなにも風が通って美しい景色の中で演奏できたら気持ちが良かっただろうに、手ぶらで来てしまったのだ。
 自然を感じていると、ふと人が歩いてくる気配がした。
 そっと振り返ると、やや大きめの荷物を持った男性が登ってきた。
「おや、先客ですか。珍しい」
「景色が良くて散歩がてらに。貴方も?」
 男性と挨拶を交わしながら聞くと、彼はいいえと答えた。
「趣味の練習です。ここで吹くと、気持ちが良いから」
 男性が大きな鞄から持ち出したのは、ピッコロだった。
 組み立てと調節をして男性が吹き始める。
 風の中を抜けるその高音はどこまでもまっすぐで心地の良いものだった。
 幾つか聞かせて貰い、男性に拍手を贈る。
「素敵な演奏をありがとうございます。毎日、ここで? 」
「朝はそうです。働きながらアマチュアバンドを組んでいるので、他の時間は来れないんです」
「それは良いことを聞いた。明日は俺も何か楽器を持ってくるので合奏しましょう」
「良いですね、お待ちしてます」
 イズマは男性と約束して、仕事へ向かうその背中を見送ったのだった。



執筆:桜蝶 京嵐

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