PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

再現性アーカム

関連キャラクター:ロジャーズ=L=ナイア

生ハムと手羽先、潮臭い邂逅
 繰り返す生ハムの奇跡――その塩加減は、成程、再現性インスマスに於いては貴重な代物だった。生ハムの原木を街に持ち込んだのは解・憂炎と称される、ひとりの亜竜種で在り、彼は自分でも理解出来ない儘『ここ』に滞在していたと謂う。おそらく、生えてきた鰓や鱗などは自らの妄想の類でしかなく、手遅れごっこが大好きな、クソッタレな神様の所業なのだと割り切る他になかったのだ。それにしても特異運命座標サマ、無限に喰えるなんて最高じゃあないか。しかし生ハムだけじゃ飽きてくる今日この頃、折角だ、アンタも『もう余所者じゃない』んだし、最近仕入れた貴重な肉でも食っていかねぇか? これか? これはだな。世にも珍しい鳥の手羽ってヤツさ。へえ、中々上質な部位だね。
 でも僕には生ハムの原木がある――なんて、断っても良かったのだが、如何にも、鼻腔を擽る、生臭い、血腥いものが、魅力的に映って仕方がなかったのだ。にじんでいる赤が滴って、ホントウに、旨そうで、美味そうで、我慢ならない。こいつはね、アンタ、そのまま齧るってのがツウな食べ方なのよ。悪魔の暗礁から来た連中も偶には魚以外の肉を貪りたいって時があんのさ。さあ、遠慮はいらねぇ、ガブリとやってくれ……。
 舌で踊ったぬかるみの喉越しと謂ったら、病的なほどにクセになるものだ。望んだ力の代償がひどくテキトウな狂気なのだとしたら、この程度の有り様など痛くも痒くもない。いや、真逆、知らなかったのか? 弱肉強食のピラミッドの頂点で指揮を執る……。

 メリーノ・アリテンシアが片翼を失くしたのは数日ほど前であった。所以に関しては彼女から直接『聞く』のが楽でよろしい。再現性アーカム、街中でアイスクリームを舐っていたその刹那だ。すれ違いのサマに嫌な『におい』を纏っていた、ひとつの男に目線がいく。お互いに会釈したところで、何故だろうか、思考よりも先に口が開いた。
「おくちにあったかしらねぇ……」
執筆:にゃあら

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