PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

再現性アーカム

関連キャラクター:ロジャーズ=L=ナイア

テイスティング
 赤と白と黄色と、その他の色で塗りたくられた、忌まわしいほどに綺麗なシリンダーを目にしていた。シャッガイからの昆虫etcが集ってくる前にサッサと始末をつけなければ成らない。宙返りしてもアノマロカリスはアノマロカリスの儘だが、いや、ハイドラ探しには十分な撒き餌と考えられる。代物が肝心だと何処かで出会った夜妖は嗤っていたが、そんな戯言に耳を傾けている暇などない。何故ならば、鮮度が落ちてしまったら勿体ないのだから。それじゃあ始めていくけど、カンちゃん、痛かったら教えてね。何を宣っているのかと思えば、オマエ、目隠しした状態で舌を伸ばすなんて狂っている……。
 今更、匙加減など確かめている場合ではなかった。テキトウなストローを突っ込んで、ぐちゃぐちゃと吸い易いように撹拌していく。この柔らかさは……うん……違う。呑み込む所以も無く別人だ。これは足掻いても藻掻いてもハイドラでしかない、これは触れても嗅いでも彼女ではない。次だ、次のシリンダーを持ってこい。ソケットは全部取り外して、だ。
 愛情を確かめる最上の方法は口腔で転がす事なのだと俺は絶対的に理解している。しかし、先程から一向に『彼女の柔らかさ』に辿り着けない。まさか、連中、僕の願いを無碍にしてくれたのか――不意に襲い来る衝撃、罅入り、割れたような意識の喪失……。
 ――かみさまは。
 ――かみさまは、ね。
 ――しーちゃん。
 一緒になることをねだっているんだよ。
 落ち込んだ、墜ちていった暗闇からの、暗澹からの覚醒は悦びと共に始まり、終わっていたのだ。ぼんやりとしている頭が、成程、露出している事だけはシッカリと把握出来ている。カンちゃん、縛らなくったって、騙さなくったって、欲しいなら、そう、笑ってくれれば良かったのに。ぷつぷつとつついてくるストローの甘さ、とろける松果のトプトプ……。死んでいるものが、味覚を有するなんて思うなよ……。

 何をしているのですか、死骸ではないものを食べるなんて、人間はおそろしい事をしますね。Nyahahahaha!!! 素晴らしい光景ではないか、展開ではないか、このグロテスクな美しさを、貴様は理解出来ないのか! 理解したくありません、ええ、お前の趣味が『良い』事は知ってはいるのですが――やはりお前はお前ですね、少しでも信じた私が愚かでした。
 そろそろご馳走様だ、見届け給えよ。
執筆:にゃあら

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