PandoraPartyProject

幕間

派遣会社ルンペルシュティルツ

関連キャラクター:キドー・ルンペルシュティルツ

『清掃事業』
「まさか本当に掃除をやらされるとはね」
 スフェーンは退屈そうにモップを掛ける。
 薄汚れた廃ビルの一室。派遣会社ルンペルシュティルツに勤める彼女らは、清掃事業という名目でここへやってきていた。
「普通、『清掃』って言ったら邪魔な奴らと殴り合うことなのに」
「あのお客様、絶対何か勘違いしてるよね」
 マーコールもはたきを動かす手を止め、うんうんと頷く。たまにはいいかと始めた掃除も、もうとっくに飽き切っていた。
 親しい友人から同意を得られ、気を良くしたのか、スフェーンはもう一人の仕事仲間へも声を掛けた。
「チビもそう思うよな?」
「……俺?」
 黙々と掃除に集中していたセムは、ちらりと振り向いた。元オンネリネン所属のこの少年は、二人とは違う。彼女たちの闘争を好む気質はてんで理解できなかった。汚れた雑巾を絞りながら、呆れ気味に疑問をつぶやく。
「さっきチンピラをボコしたのは?」
「あんなのノーカウント。埃を払ったのとおんなじだよ」
「あ、そう……」
 二人の会話をよそに、マーコールはいいことを思いついたと手を叩く。
「戻ったら社長を詰めて、特別手当で酒盛りするかぁ!」
「お、いいねぇ! ――チビも来る? 社長には内緒でエールでも飲ませてあげるよ」
 いかにも愉快そうに企みを広げる二人に、セムは適当に相槌を返した。
 内心、「外の大人ってこんなのしか居ねぇの?」と、悪態を吐きながら――。
執筆:
切れない領収書
「これ、経費で落としてくんねーっスカ?」
「見せな」
 アリアンヌが普段通り事務仕事をしていた時のこと。チャラっとした非正規雇用スタッフが一枚の領収書を持ち込んできた。内心仕事を増やしやがったな、などとは思いつつその紙切れを奪い取って確認する。
──
宛名  神  様
金額: 1000GOLD
但し:社内交際費として
上の金額正に受領しました
──
「やぁ、昨日社長と飲みィ行きましてね?そんで『俺は寝る、代わりに領収書切っといてくれ』とか言われちゃんたんですよォ。んじゃ後はよろしくで──」
「待ちなあんた。こんなふざけた領収書が切れると思ってんのかい」
 確かに領収書に書かれている日付は昨日だ。金額も常識の範囲。但し書きに関してはこいつの話す経緯としては間違ってはないが……そんなことは些事。何よりも問題なのは。
「宛名が『神(カミ)』様ってなんだい!そこは『上(ウエ)』様って書くんだよ!」
 どう見たって通る訳のない宛名の間違い。店員もなぜそこを間違ったのだと突っ込みたい。
「ん、ェ〜…?そこって『上(カミ)』様ッて書くんじャあ?」
「っはァ〜〜……」
 俺、何かやっちゃいました?と笑うコイツにモノを教えた『酔っ払い』をシバいてやると、アリアンヌは改めて決意した。
「あんた、今すぐその店に戻ってキチンと『派遣会社ルンペルシュティルツ 』様って書き直してもらうんだよ。嫌ならあんたの給料からその分サッ引くからね」
「ひッ、すすっすぐ行って来まァ〜〜ッス!」
 ドスを効かせギロリ流し目で睨んでやればこの通り。ヘラヘラとした口調は消え必死な顔で事務室を飛び出していった。そしてドタドタ足音が去った後、未だ残る書類の山を見て一つ伸びをするアリアンヌ。
「こうやって簡単に言うことを聞いてくれるのなら、あたしの仕事が楽になるのにねぇ」
 そんな叶わぬ願いを溢しながら、彼女は仕事に戻るのだった。

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