幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
03さんぽ
03さんぽ
03さんぽ
関連キャラクター:チェルハ 03
- 砂漠の朝焼け。或いは、変わったものと変わらないもの…。
- ●いつか見た砂漠の朝焼け
夜の闇に紛れ、それはゆっくりと歩き続けた。
砂漠の夜は酷く冷えるが、寒さなんて感じていないみたいな薄い衣を纏って、共も連れず、馬にも乗らず、どこを目指しているのかさえも分からないまま、砂漠を1人で歩き続けた。
そうして、長い夜を超えて、もうじき朝が訪れる頃、それは古い遺跡に着いた。
残っているのは、かつて家だったものの土台だけ。割れて散らばった家具の欠片や、折れた銅剣、槍の穂先に、損傷の激しい鎧だったもの。
それから、すっかり白骨化して今にも砂に還りそうな誰かの遺体が、そこかしこに。
「ここには、どんな人が暮らしていたんだろう」
死後、100年以上の時間が経過しているだろう。そこにかつて暮らしていた誰かの顔も、笑い声も、暮らしも、それからどんなことがあって、どんな風に死んでいったのかも、何もかも失われて久しい。
ともすると、こんな場所に遺跡があることさえ今を生きる誰も知らないのかもしれない。
地図には載っていない遺跡だ。
遺跡に残った破壊の痕から、きっと大きな戦いがあったのだと予想できる。
「……人形?」
チェルハ 03は、砂に埋もれていた人形をそっと拾い上げた。作ったのは子供だろうか。出来の悪い粘土で出来た人形は、チェルハの手の中で砂と化して形を崩す。
また1つ、ここで生きた誰かの思い出が消えた。
手の平の上に残った砂を見つめていると、乾いた風が吹きつける。風に運ばれ、砂はどこかへ消えていく。
砂の吹かれた方向へ、チェルハはふと視線を向けた。
東の空が白い。
朝が来たのだ。
夜闇が光に払われて、砂漠が白に染め上がる。
こんな風にきれいな朝焼けを見たことは無い。
そして、きっと……かつてこの地に住んでいた、今はもうこの世にいないどこかの誰かたちもきっとこんな風な景色を見たのだろう。
朝日と共に1日が始まる。「おはよう」なんて、いつも通りの挨拶を交わして。
「おはよう。はじめまして」
それから、さようなら。
おやすみなさい。
風に吹かれて消えていく、手の平の上の砂を見送りながらチェルハはそう呟いて。
それから彼女は、また1人で砂漠を歩き始めるのだった。 - 執筆:病み月