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幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

03さんぽ

03さんぽ


関連キャラクター:チェルハ 03

星の楽園
 仕事の帰りだった。冬の名物とでも言うべきものだろうか――イルミネーションを目にした。
 普段から遊園地として運営されているところらしかった。昼間は老若男女の楽しそうな声で溢れるここは、夜はしっとりと落ち着いた空気で支配される場所に変わる、らしい。

 折角だからと遊園地の中に入ると、きらりと瞬く光が降り注いだ。頭上は星のしずくを思わせるような灯りが広げられ、植え込みには青白い光が灯され、足元を穏やかに照らしている。思わず、03はほうと息を吐く。

 星と雪で満たされたような場所を歩いていると、ちらほらと遊具が現れ始める。空に登る月の装飾がされたジェットコースター、天使が躍るメリーゴーランド、妖精が座るコーヒーカップ。遊具の一つひとつに施された意匠を眺めては、それが何を表しているものなのか思考を巡らせる。時折自分も遊具に乗っては、すぐ側で瞬く星に手を伸ばした。

 この遊園地のテーマに、特に明記されたものはない。だけどこの装飾達を眺めていると、「星の楽園」をイメージして作られたものなのではないのかと思うのだ。
 遊んでいる時間は、一時の夢。だけどその夢を壊さないように、この場所は作られている。現実に戻ったとしても、思い出が鮮明に生き続けるように。遊んでいたときはまさに「楽園」にいたのだと、確かに言えるように。

 良いところに来たものだ。03は口の中でそう呟き、再び星の世界に身を沈めた。
執筆:椿叶

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