PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

レイリー何でもエモシリーズ

関連キャラクター:レイリー=シュタイン

ヴァイスドラッヘン。或いは、白き盟友…。
●数多超えて
 刀傷に銃痕、へこみに欠け、泥と血と火薬の汚れ。
 油を染み込ませた布で、盾の表面を丁寧に拭う。
 大盾に残った傷の1つひとつが、レイリー=シュタインの掻い潜って来た戦いの記憶だ。いかに竜の鱗のように堅固な盾とはいえ、激しい戦いを幾度も繰り返したとなれば多少の傷は避けられない。
 とはいえ、大盾のおかげで拾えた命もある。守れた命もある。
 それと同じか、それ以上に救えなかった命もあるが……仕方がないと納得するには、レイリーはまだ若すぎた。
 そして、これからも……。
 きっと彼女は、大盾と共に幾つもの命を救うのだろう。
 そして、幾つもの命を見送るのだろう。
 白きランスで、幾人もを傷つけるのだろう。
 それが彼女の選んだ道だ。今更、歩みを止めることはしないし、出来ない。
 盾とランスを棚へと置いて、鎧を脱いで、戦場から足を遠ざけるという選択肢もあるはずだ。だが、それを選ぶことはしない。
 ここで鎧を脱ぐことは、これまで救った命と、救えなかった命に対する侮辱では無いか。
 そんな思いが脳の隅、心の奥に時折ふと湧き上がるのだ。
「まだ終わらない。終われない」
 それは誰に向けた言葉か。
 レイリーを守る大盾か。
 レイリーの振るうランスだろうか。
 或いは、その身に纏う鎧かもしれない。
「最後まで付き合ってもらうわよ」
 いずれ、きっと歩みを止める日が来るだろう。
 けれど、それは今ではない。
 ならば今は前へと進め。涙を流すのも、嗚咽を零すのも、救えなかった誰かに詫びるのも、やがて訪れる“いつか”で構わない。
 手入れを終えた盾を背負い、ランスを握って、彼女は光の差す方へと歩き始めた。
 朝日が昇る。
 今日も1日が始まる。
 今日もきっと、彼女は戦場に立つのだろう。
執筆:病み月

PAGETOPPAGEBOTTOM