PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

ご主人と猫

関連キャラクター:武器商人

■■■の、味
「クウハぁ、お菓子作ったけど食べる?」

 主人がやって来て小さな箱を掲げたものだから、クウハは二つ返事で自分の部屋に招き入れた。紅茶を用意して、いそいそと渡された箱の中身を検めて思わず目を剥く。

「ミルクレープか。おそろしく手間の掛かるモン作るじゃねーか……」
「気分がノって」

 目の前のミルクレープの断面は多少のバラ付きはあるものの、かなり綺麗で多くの層を見せている。菓子作りが趣味であるクウハはその苦労と試行錯誤の回数が手に取るようにわかるし、その完成品を躊躇なく自分に分け与えてくれる主人に愛おしさを感じていた。ありがとうな、と感謝を伝えてからフォークでミルクレープを切り分け、一口。

「……美味い、な」

 甘く、柔らかく、何層も重なったクレープ生地とクリームが唇に触れる感触にクウハは酷く覚えがあった。生地から僅かに香るラム酒の香りは特別なものではないはずなのに、頭の中が蕩けるほどの心地よさを『錯覚』する。

 そうだ、これは主人の──

 紅茶なんて飲む暇も無いほど夢中になってミルクレープを味わい、気が付けば皿はあっという間に空っぽ。それを非常に名残惜しく思いながらようやくクウハは紅茶に口をつける。

「ごちそうさま。……なぁ慈雨。頻繁にじゃなくていいからまた作ってくれよ、これ」
「おやま、そんなに気に入ってくれた?」
「ああ。絶品だ」

 口の端に付いたクリームを舐め取りながら、クウハはどことなく熱を孕んだ視線を主人に向けてとろりと微笑んだ。
執筆:和了

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