PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

ご主人と猫

関連キャラクター:武器商人

夢を見た後の、
 水の中にいる。ふと、これは夢だろうと分かる時。大抵は水の中にいる。
 どうしてかは分からないし、悪霊も夢を見るのだと知ったのは混沌に来てからだ。
 水の中で、頭を下に沈み行く夢。
 何を示すのか、何が呼んでいるのか。
 不思議と不吉な気はしなくて。でも、どことなく寂しさを感じる夢。
 ……もしかして、慈雨の過去の夢が少し漏れてきているのだろうか。
 けれど、いつも分からないまま目が覚める。
「おはよう、我の猫」
「おはよう、俺の慈雨」
 俺に膝を貸したまま書類仕事をまとめていた慈雨が優しく額を撫でてくれる。
 ゆっくり起き上がって机の上の書類を見る。
 等間隔に並べられた茶封筒の上に重ねるスタイルは、サヨナキドリの敏腕マネージャーからの指示だったか。
 送る部署と宛先ごとに書類を重ねて置き、最後に中に入れて封をする。
 「人間がやる以上、ヒューマンエラーは必ずある。だからミスが少なくする方法を考えた方が建設的」と、彼は常々言っていた。
 束の半分ほど終わったのを見計らい、黒い封筒を手に取る。
「俺の『仕事』はこれだけか?」
 通常の手紙サイズの封筒に三枚ほどの書類をパラパラと流し読む。
 長い銀髪の隙間から慈雨が鋭い目線を寄越す。
「本当はもう一枚。だが、調査が難航していてね。それは終わり次第、渡すよ」
「りょーかい。どれも仕事開始は夜か。相方は?」
「海洋地域のみ海洋支店長と。それ以外の地域はいつも通りのあのコを」
 それに返事をして、もう一度膝を借りて眠る。
 仕事の時間は遠く、なれば愛しい慈雨に甘えて英気を養うことにした。

 ──だってディナーの前に腹を空かせていないのは、マナー違反だろう?
執筆:桜蝶 京嵐

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