PandoraPartyProject

幕間

鈍星の夜

関連キャラクター:星穹

載せるほどでも、無い決意

「青いですね。其れも酷く青い」
 呟いたのは、何時だったろうか。
「救えないと解っているのなら、切り捨てればいいものを。
 救おうとするから。手を掴もうとするから、傷付くだけなのに」
 悔やむような、或いは憐れむような言葉を、口にしたのは遥か昔のこと。
 その言葉を、翻す心算など毛頭ない、けれど。

『――それでは、行ってきますね。』

 書き置きを。知己に宛てた手紙を書き終えた星穹は、少しだけ苦笑した。
 過去、自らがあたった依頼で呟いた言葉を思い出したためだ。あの頃とは多くが変わりながらも、こうした……「救いの手を認めない」と言う部分の自己は、結局変わることが無かったのだなと。

 ――ああ、でも、けれど。

 星穹は呟く。過日の依頼で出会った双子へと言葉を吐き捨てた自分とは、ほんの少しだけ変わった点に思い至ったが為に。
 それは、きっと『彼の地』へと赴いた後の自分へと手を差し伸べてくれるであろう友に、仲間に、託したいものが出来たと言うこと。
 ……託せる相手が、出来たと言うこと。

――だから、私が居なくなっても、きっと大丈夫。

 誰ともなく呟いて。便箋に秘匿の術式を構じ、彼女は自室から出ていった。
 久遠の森の主、一人の魔種が待ち続ける、彼の地へと。
執筆:田辺正彦

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