PandoraPartyProject

幕間

妖精カップルの甘き一時

関連キャラクター:ツリー・ロド

しんりょく、そのあと。
「たぁッ!」
 巨大な鎌のオーラが怪物の肉体を貫通する、大蛇とも巨大な倒木にも見れる、火焔を伴った怪物。その巨体が地響きをたて地面に崩れ落ち、光の粒子へと消えていく。
「サイズ、大丈夫?!」
「ああ――なんとかな」
 深緑の深い森の中、冠位怠惰が崩れ去った後もなお悠久の神木が灰と化してしまった傷は深く。妖精郷に向かう道中で歪な魔物に襲われる事は少なくない。
 呼吸を整える、腐ったような臭いが凄い。怪物が消え去った地面の上にメープルが降り立ち残された体の一部を拾い上げた。
「ああ……やっぱり、この子も大樹の嘆きだ」
 普通の樹木より長い年月を生き神秘性を帯びた大樹、その防衛反応。ファルカウが深い傷を負った今、物理的にも神秘的にも土地のバランスが乱れ後発的に現れるケースは、減りこそすれど無くなったわけでは無い。
 メープルの後ろ姿に何かを感じたのか、サイズもまた彼女の後ろに降り立ち、そっとその小さな背中に手を添えた。
「メープル……」
「大丈夫、宿敵が居なくなったのに暴れる方が木にとっても嫌だろうさ」
 いつもの笑顔で彼女は先ほど握りしめたそれを天に掲げる。それは葉の付いていない枯れた枝であった。
「なぁサイズ、『私』がピンチになった時『わたし』はどうなるんだろうね?」
 大樹の嘆き、そして精霊種。メープルの母体もまた大樹となった楓である。妖精郷から遠く離れた地でも彼女は繋がっているのかもしれない。その望みから蓄えた魔力の一部を受け取り、自らの肉体を進化させる事ができたほどに。
「別の子が出てくるのかな、それとも上書きされて意識が消えちゃうのかな。案外何ともなくてパワーアップできちゃったりして!?」
「ファルカウ……」
「あはは、なんか分身したんだっけ? ありゃあ規格外だね、私にできるかな?」
 ぎゅっとメープルはサイズの胸元に顔を埋める。
「しんみりするなよ、ずっと先さ。私たちを知る人がいなくなるくらい。その時は『妹』をよろしく頼むよ、サイズ」
 物語であれば巨悪は滅べばハッピーエンドを迎えて、完結する。けれどもこの世界では、深い傷跡を抱えながらも日常が続いていく――どんな思いを抱えていても。
「ああ、やっぱりキミは妖精にしては大きすぎだ。変身してもいい?」
「……妖精郷に着いたらな?」
 サイズはメープルの体温を感じながら、しばらくそこに立ち尽くしてしまうのであった。
メープルの独り言
「サイズ」
「サイズサイズサイズー♪」
「えへへ、呼んだだけ!」
 何となく、彼の名前を3回呼ぶ癖がある。短いからリズミカルに口から出てしまうのか、振り向いてもらいたいからか、それともキミの暖かさに包まれてる気がして安心するのかというと、たぶん全部。

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