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幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

レーヴェ・ブランクという男

関連キャラクター:レーヴェ・ブランク

ムース・エルクホーン。或いは、ある男の話…。
●ムース・エルクホーンはかく語る
 レーヴェ・ブランクについて?
 あぁ、黒い髪に傷だらけの身体をした偉丈夫だろう? 私はヘラジカの獣種だからね、体格には自信があったんだが……そりゃ背は私の方がでかいけどさ、あいつの纏う雰囲気は、あいつの体躯をひと際大きく見せる類のそれだったよ。
 出会ったのは砂漠の真ん中。
 仕入れの途中で鮫に襲われて遭難してたところを拾ってやったのさ。
 何でも商会の部下を全員逃がして、レーヴェの奴は単身で鮫と戦ったって話だったよ。まったく、そんなことを繰り返して来たんなら傷だらけなのも納得だ。
 
 ちょうどその頃、うちの集落は滅亡の危機に瀕していてね。あぁ、盗賊だよ。盗賊が攻めて来るって言うんで、錆びた剣や鉄の棒を搔き集めて、徹底的に抵抗しようとしてたんだ。
 でも、残念ながら盗賊の方が数も多くて、装備も良かった。
 私はレーヴェに、盗賊が来ないうちにさっさと逃げ出しな、って言ったのさ。でもレーヴェは逃げなかったんだ。一緒に盗賊と一戦交えてくれるなんて言い出しやがった。
 何でもレーヴェ1人では、砂漠を旅して近くの都市まで辿り着ける気がしない……ってことらしい。だから私らを道案内として雇いたいと言い出しやがった。
 そのためには盗賊が邪魔だから、撃退するのに手を貸してくれるんだってさ。
 まったく、あの時は腹を抱えて笑ったもんだ。
 初対面の私たちと、こんなところで死ぬつもりか……ってね。
 あぁ、でも……でも、あいつは笑ってなかった。
 レーヴェの目は本気だったよ。
 
 俺が1人で10人分の働きをすれば、盗賊程度は撃退できる。
 
 当たり前みたいな顔をして、そんなことを言うあいつを見て、私たちは腹を決めたね。元々は、集落と一緒に、誇りを胸に死ぬつもりだったんだけど、生きてやろうって思ったよ。
 ん? 結果はどうなったのかって?
 おいおい、お前さんの目は節穴か?
 私が生きてここにいて、美味い酒を飲んでいるのが“結果”って奴じゃないのかい?

_______砂漠の駆け出し商人、ムース・エルクホーン
執筆:病み月

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