PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

空翼(ソラ)を求めて

クウハとハンナさんの日常。

https://rev1.reversion.jp/interlude/detail/361?story=798
上記幕間から
https://rev1.reversion.jp/guild/1335/thread/21246
こちらのRPを経て恋人関係になりました。


関連キャラクター:クウハ

シャッターチャンス!!
「はい、チーズ!」
 自前のaPhomeを向けて、クウハは写真を撮った。ミントグリーンのワンピースを翻す彼女を、アルバムに収める。
 歴戦の軍人の反応速度でハンナは彼の方を見た。無言ながらも訝しげに眉をひそめていて、この行為の意味を問いかけてきているのは明白だった。
「……今度は驚かなかったか。時間経ったからイケると思ったんだけどなァ」
「人から教わったことを簡単には忘れませんし、忘れられませんから」
 クウハがハンナに写真の撮り方を教えたりなんだりした一件。あれから月日が経ち、二人の関係もずいぶん変わっていったものだった。
 だが、真面目に返事をするハンナの姿は以前から変わっていない。それならばと、クウハはニヤリと笑った。
「なんだよ、俺から教わったことなら何でも忘れないって?」
「そんなこと言ってなっ……! ……でも、それは、その……事実、かもしれませんが」
 ハンナは軍帽のひさしを掴もうとするが、生憎今日は帽子を被ってきていない。指だけが空しく宙を切った。咄嗟に顔を隠すように俯く。それでも、灰色の髪から覗く頬は、仄かに朱を帯びていて。
 否定を予期していたクウハは思わず硬直する。数秒の間が空いて、ハンナはなかなか言葉の降ってこない彼の顔を見上げた。
「……自分で言っておきながら、何で意外そうな表情をしてるんですか」
「ん? なんでだろーなー。ハンナが俺のことを愛してるなんて当たり前なのになァ」
 クウハは目を逸らす。普段の気丈さを取り戻したハンナは、長く息を吐いた後、「大体」と言葉を続けた。
「写真を撮りたいなら素直に言ってくれればいいんですよ。……将来、見返したときに楽しいかもしれませんし」

 ――口をついて出た『将来』という単語。
 そのシンプルな響きは、二人の心をくすぐるような心地がした。希望と共に将来を考えるなんて、そんなこと――。
 鬱陶しい硝煙の匂いと止めどない炎。流れる血と誰かへの暗い激情。そんな想像が、互いの胸に一瞬だけ去来した。けれど、一瞬だけだった。今は、一瞬だけで済んだ。
 クウハはふっと笑った。人をからかうときに浮かべる笑みとは違う、柔和な微笑みだった。
「じゃあ、撮ってみてもいいか? 俺とハンナで、一緒の写真を」
「……はい」
 彼は彼女の薄い肩に腕を回し、そっと傍らに抱き寄せる。シフォンケーキを連想させる甘い香りが鼻腔に広がった。再びaPhoneの液晶に触れる。
 二人で寄り添って、写真を一枚。来るべきいつかへ、想いを乗せて。

 ●

「あの、この写真、妙に歪んでいる気がするのですが。火の玉も浮かんでいませんか?」
「おい誰だよ心霊写真にしようと写り込んできたヤツ! 今日は許せねェからな!!」
執筆:

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