PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

空翼(ソラ)を求めて

クウハとハンナさんの日常。

https://rev1.reversion.jp/interlude/detail/361?story=798
上記幕間から
https://rev1.reversion.jp/guild/1335/thread/21246
こちらのRPを経て恋人関係になりました。


関連キャラクター:クウハ

思い通じたその爽やかな朝に

「おはようございます。」

 微睡みから引き戻す、とても心地のいいその声。自分を見下ろす、思い通じた相手。

「悪ィ。寝ちまったか。」

 昨晩は叱咤を浴びて。そして受け入れてくれたことに安堵したか、またも彼女の膝の上で寝ちまうとは。

(もったいねぇことをした。)

 などという雄の声は、さすがにまだ出さないが。

「体調、大丈夫ですか?」

「アァ、最高の枕で寝たからな。」

 そう返せば微笑むその表情が、いつものそれよりもさらに柔和に、愛おしく見える。

「でしたら……今日は先日の買い物の続きでもいかがですか?」

「……あ゛ー……。」

 先日の買い物。それを思い起こし、思わず気だるげな声が漏れる。

「……なにかあったんですか?」

「アァ、いや……」

「な・に・か。あったんですか?」

 わざわざ言うのもなぁと躊躇していると、いつになく凄んでくるハンナに思わず気圧される。

(こいつ、こんなキャラだったか?)

「……なるほど、仮にも交際を始めた相手に、二股以上に言えないやましいことがあるということですか。」

 じとっとした瞳にすわった声で、そのまま窓へと向かおうとする彼女。

「おまっ、バカっ、んなのネェよ! ただなぁ……」

 慌ててあの日の出来事を説明するクウハ。
 背中越しにそれを聞いていたハンナは、「ハァ……」と一度息を吐き。
 振り返った時には、毒気の抜かれた、呆れたような表情で。

「なんですかそれは。どうして言ってくれなかったんですか。」

「いや、言えるかヨ。」

「……フフッ。でも、そうですか。そんなにあなたは私のことを気にかけてくれていたってことですね。」

「……あぁそうさ。俺のせいでおまえが安く見られんのが嫌だったんだよ。」

「フフッ。素直でよろしい。それに……」

 そういいながら、ベッドの隣に腰掛け、彼の肩へとしなだれかかる頭。

「……それに?」

「……私もなんですよ。」

「……」

 灰色の髪を撫ぜながら、言葉を待つ。
 彼女も嫌がるそぶりはなく。むしろどこか心地よさそうに。

「あの日、店員の女性に、あなたのことを彼氏と間違われて。違うといったら、紹介してって言われたんです。」

「……言えよ。」

 溜息まじりにそう返せば。
 肩越しに上目遣いでこちらを覗く女はどこか楽しそうで。

「言えますか? 彼は私のですよ、なんて。あぁ、なるほど。あの時のモヤモヤは、そういうことだったんですね。」

 そう話す彼女は、とても晴れやかに笑って見せる。
 
「……言ったでしょう? 私をなめるなって。もう一度昨日のやり取りをされますか?」

「いや、それはマジで勘弁だワ。」

「じゃあ、行きますよ。何かあったら言ってくださいね。私がなんて呼ばれていたか、ご存じでしょう?」

 そう言って話す彼女はもはや妖艶とも言えて。

「……今あなた、私のことを食べたいと思ったでしょう?」

「……オマエ、本当にそんなキャラだったか?」

「フフッ、女は変わるものですから。あなたのせいじゃないですか?」

 あるいは、かつて英雄と、魔王と言われた彼女の素養が開花しただけかもしれないが。
 俺色に染まる。そう言われ、思わず高ぶりそうになるものの、その前にすることがある。

「んじゃ、いくか、俺の灰色髪の姫(シンデレラ)。ただし行くのはこの間とは別の店な。」

「えぇ、そうですね。」

「指輪かピアスか。それともネックレスか。何がご所望だい?」

「え?」

 かけられた言葉に、二人の絆の証を見に行くと気づき上気する頬に、「……まだまだ可愛いお姫様だな」と笑みが零れる朝。
執筆:ユキ

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