PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

空翼(ソラ)を求めて

クウハとハンナさんの日常。

https://rev1.reversion.jp/interlude/detail/361?story=798
上記幕間から
https://rev1.reversion.jp/guild/1335/thread/21246
こちらのRPを経て恋人関係になりました。


関連キャラクター:クウハ

止まり木
 身体が重い。
 思考が定まらない。

 たとえ主と同じ不死性を得ても。その身全ての性質が彼と同質になったわけではなく。
 彼に近づけば近づくほどに、蝕まれるモノもある。アレはそう、抗いがたき甘美なる毒だ。
 それでなくとも、魂ではなく肉体の不死性についてはつい最近得たもの。
 痛みによって生み出される黒い暴力を翳せば、目の前で弱者をいたぶる愉悦から強者の尾を踏んでしまった絶望へと色を変える魂たちを眺めることができ、気分は高揚する。けれども、彼らを排除してしまえば、残るのは。

 あァ、だりィ。
 朝日がうぜェ。
 さっさと帰らねェと。
 帰る……?
 何処に?
 
 ――おまえの"家"だからね。

 思い起こされる甘美な呼び声に。
 同胞たちが待つ館へと向いていた足は、はたと止まり。
 ただひたすらに甘く優しく包んでくれる主の元へと、踵を返そう……という時だった。

 ……この匂い。なんだ。

 それは、どこかで嗅ぎ覚えのある匂い。
 人工的な甘く美味しそうな香りの中に確かに香る、温かなソレは。

「クウハさん?」

 声がした方に振り向けば、道端のベンチに座して本を読むのは見知った有翼の女。

「 ……おぅ、ハンナじゃねェか。奇遇だな。っかし、仕事もしねェで読書とは、いい身分だな。」

 無意識に。いや、自然ともいうべきか。
 呼吸するようにいつもの軽口を叩くクウハ。
 けれど。

「……あ?」

 突然目の前を何かが遮る。
 それがハンナの手だと気づくのに、一拍遅れた。
 視線を下げれば、いつもより近い彼女の顔。背伸びしているのだろう。下から自身を伺うその表情は、どこか心配げだ。

「どうかされましたか? お疲れのようですが。」

「あァ? なにいってんだか。あぁ、そうか。俺様が夜通し張り切って朝帰りするところだとでも思ったか? このっとおりピンピンしてんゼ?」

 そうやって、突き放す様に。
 踏み込まれないに。
 下世話に茶化してみても。

「でも、私にここまで近づかれても気づかないくらいにはお疲れなんじゃないですか?」

 ……敵わねぇな。

「……ちっと眠ィだけだ。心配すんな。」

 そうやって、額に当てられた手を振り払おうとすれば。

「……でしたら。」

「あ? オイ、何を……」

 払おうとした手を引かれれば、先ほどまで彼女が座っていたベンチへと誘われ。

「……なぁ、これは、どういうこった?」

「私の膝ではあまり寝心地もよくないかもしれませんが。」

 俗にいう、膝枕という奴だ。
 んなこたぁ分かってる。
 文句の一つでも言おう。
 そう思ったが、何故だろう。
 とたん、思い出したかのように強い眠気に襲われる。
 そういえば、最近はあんまりよく眠れてなかったな……

 そんなことを思いながら、無防備に眠ってしまうクウハの髪を撫ぜ、読書に戻るハンナ。
 晴れた秋の風が心地よく、猫のチャームを揺らしていた。
執筆:ユキ

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