幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
空翼(ソラ)を求めて
空翼(ソラ)を求めて
クウハとハンナさんの日常。
https://rev1.reversion.jp/interlude/detail/361?story=798
上記幕間から
https://rev1.reversion.jp/guild/1335/thread/21246
こちらのRPを経て恋人関係になりました。
関連キャラクター:クウハ
- その香りは無自覚の
- 最近、屋敷に出入りする人間が多くなったから、とクウハは買い物がしていた時だった。
日用品を買いに入った店の出入口付近、ふんわりと良い香りが鼻孔を擽った。
早足で通りすぎてしまったその場所へ、慌てて振り返る。
白く落ち着いた空間に様々な形の瓶たちが立ち並ぶ。
品の良い字で書かれた文字で香水のコーナーと上から看板が吊るされていた。
鼻が誘われるままに進めば、どうやら女性向けがメインのようだ。
気にせず、先程の香りを探してみる。
置かれていたムエット紙にワンプッシュしていって、ひとつづつ確認。
やがて辿りついた正体は、陶器の瓶に入った香水だった。
四角い瓶の表面にはアフタヌーンティーの様子が描かれている。
香りもズバリ、甘いケーキのような優しいトップから爽やかに紅茶の渋みみたいなものが香った。
「あ、でもこのまま渡すと邪魔だよな」
次の週末、ハンナはもう何度も通った屋敷のお茶会に誘われていた。
クウハや屋敷に集う人達と過ごす楽しい時間はあっという間で。
帰り際はいつも少し、どこか寂しい。
そんな後ろ髪を押さえながら帰り支度を整えた時。
「ハンナ、これやるよ」
そうクウハが差し出したのは、薄青いリボンで止められたグレーの箱。
ハンナが断って開ければ、あの時の香水瓶と指輪ケースに収まるチャーム。
「クウハさん、これは……?」
驚いたハンナがクウハとプレゼントを見比べながらやや震える声で聞く。
反対にクウハは楽しそうに答える。
「買い物に行ったら見つけてなァ。美味しそうな香りなんだぜ」
つまみ上げたチャームには猫と小指ほどのガラス瓶が揺れ、中の香水が揺れる。
それに釣られるようにハンナが嗅げば、なるほど甘く美味しそうな香りが鼻を楽しませる。
「ネックレスとかは邪魔だろ? 鞄やベルトにつけられるチャームなら落ち着きたい時に良いだろ」
だからやるよ、とハンナの手に落とす。チャームの猫と目が合う。
ハンナは断りかけて、ああやって頬をうっすら染めつつ礼を告げた。
- 執筆:桜蝶 京嵐