PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

空翼(ソラ)を求めて

クウハとハンナさんの日常。

https://rev1.reversion.jp/interlude/detail/361?story=798
上記幕間から
https://rev1.reversion.jp/guild/1335/thread/21246
こちらのRPを経て恋人関係になりました。


関連キャラクター:クウハ

「なァ、ハンナ」
「なんですか? クウハさん」
 手元の本に目を落としたまま呼びかけに返事をする。前方から聞こえてきた声は良くよく知っているもの、また悪戯されるのではと反射的に読んでいる本を握る手に力を籠めた。
「いや、よくに用事はないんだけどな」
「そうですか」
 前方の気配が隣に移動して、ドカっと椅子に座る音が聞こえた。視界の端に彼のパーカーが映る。ちょんと尖って見えるそれはフードに付いた猫耳の部分。どうやら座った後そのまま机に突っ伏しているらしい。
 読書の邪魔にならないのなら、と意識を本に戻して数分後、また声がかかった。
「ハンナ」
「なんですか?」
「いや、なんでもねェ」
 短いやり取り、そしてまたしばらくの沈黙。溜息が聞こえたような気がしたが、そもそもクウハが何をしたいのかわからなければどういうすることもできない。強いて言うなら声だけかけて手を出してこないのは珍しいというべきか。
 そうこう思考するうちに視界の隅に映っていたパーカーが動いて、立ち上がる気配がした。そのまま背後に回ってきた気配は自分の読んでいる本を見ているのかしばらく動かない。

「わっ」
 突然、本が視界から消えた。正確に言えば伸ばされた手で取り上げられていた。何もしてこなかったのですっかり油断していたが、クウハと言えばこういう人だ。なんだかんだとちょっかいをかけてくる
「何をするんですか」
 顔を上げ、むぅとした表情を見せればクウハは機嫌よさそうにクツクツ笑う。
「あんまりにつまらなそうな本を読んでたから俺様が息抜きさせてやろうと思ってな」
「つまらなくはないのですが」
「いいからいいから、本なんか読んでないでどこかに遊びにいこうぜェ」
「そちらが本題ですか……」
 パタンと閉じられた本はクウハのそばに浮いている。試しに手を伸ばして取り返そうとしてみたがふわっと浮いて絶妙に届かない高さまで逃げていく。
「返してください、そうしたら付き合いますから」
「さっすがハンナ、わかってるじゃねェか!」
 嬉しそうな声と共に机に戻ってきた本。掴もうと伸ばした手は、しかしまた空を切った。目の前には揶揄うようにぷかぷか浮かぶ一冊の本。
「クウハさん!」
 少し強くなったハンナの声にクウハの笑い声が響いた。

 そう、今日も楽しく彼女を揶揄う。ピリピリ張り詰めたような顔をしてないで、女の子らしく表情を変えればいい。
 だからこれは自分の楽しいことと彼女のため。声が聴きたかった、なんて単純な想いはきっとどこにもないのだ。
執筆:心音マリ

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