PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

空翼(ソラ)を求めて

クウハとハンナさんの日常。

https://rev1.reversion.jp/interlude/detail/361?story=798
上記幕間から
https://rev1.reversion.jp/guild/1335/thread/21246
こちらのRPを経て恋人関係になりました。


関連キャラクター:クウハ

飛べないって言ったじゃないですか。
(……失敗しました。)

 陽を遮るもののない海洋の海上で、ハンナはフラフラと帰路についていた。

 一晩の哨戒任務。
 かつて軍属として幾度も経験したソレは、ハンナにとっては特に問題ない任のはず……だった。

(久々とはいえ、混沌に来て、弛んでいましたか……)

 かつて軍属だったハンナ。任務とあれば、休息もままならない。殊、女であるハンナにとっては、排泄行動一つをとっても大きな隙となる。なにより、銃剣を手放すわけにはいかず、かといって下げたまま軍服やハーネスを脱ぐなど、面倒極まりない。それゆえに、任務となれば自然、水分摂取は必要最低限となるのが兵卒としてのハンナの習慣であった。
 のだが。

(海洋の湿気を見誤りました……)

 軍服の中は汗まみれ。一晩中浴び続けた潮風が瞼以上に羽を重くする。

(あ……これは、本格的にまずいかもしれま……)

 ローレット支部まであと少し。その安心が緊張の糸を緩めてしまったか。
 とたんに視界が暗転する。

 ――落ちる。

 それがわかっていても抗う力はなく、ハンナは海面へと加速していく。
 落下死とは。翼人にとってはなんとも不名誉なものだ。
 そんなことを思いながら意識を手放そうとしていたハンナだったが、けれど、その時が訪れることはなかった。

「おいおい、オマエさん、そんなに俺の仲間になりたかったのか?」

 その声は最近聞き慣れた声で。
 その胸の冷たさは、先日感じたもので。

「……気持ちいい。」

 思わず頬ずりするハンナ。その表情は熱で上気し、常にはない艶っぽさを帯びていて。
 けれど、彼女を受け止めたクウハはそれに憮然とした表情を浮かべ、

「……そうかい、そんじゃ、もっと気持ちいいことしよう……ゼ!!」

「え……? ひゃっ……わぷっ!!?」

 2回。
 激しく上がる水柱。
 響く水音。

「ぷはっ!! な、なにするんですか!?」

「どうだ、ちったァ涼しくなったか?」

 突然ハンナもろとも海に飛び込んだクウハだったが、それも火照った彼女の体を冷やすため。

「それにしたって突然……そ、それにあなた飛べなかったんじゃ……!」

「俺ァ『飛べない』なんて言った覚えはネェがなぁ?」

 たしかにあの日、彼自身は一言も「飛べない」とは言っていなかった。

「……とにかく。ありがとうございました。」

「オウ。んで? どうする? プリンセス。」

 どこか揶揄うようなその笑みに、けれど、まだ本調子ではないからか。
 あるいは、なぜかその扱いも悪くないと、そう思う自分がいたのか。

「……そうですね。あなたのせいで羽が濡れてしまいましたから。責任をとって、乾くまでこのまま運んでくださいね。」

 そう返せば、一瞬意表を突かれたような表情を浮かべ、けれどクハッ!と笑って見せれば、彼はこう返すのだ。

「仰せのままに。マイレディ。」
執筆:ユキ

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