PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

空翼(ソラ)を求めて

クウハとハンナさんの日常。

https://rev1.reversion.jp/interlude/detail/361?story=798
上記幕間から
https://rev1.reversion.jp/guild/1335/thread/21246
こちらのRPを経て恋人関係になりました。


関連キャラクター:クウハ

ぬるま湯
「ナァ、ハンナ」

 俺は、どこまでいっても悪霊で。

「他に好きな奴ができたから、別れてくれるカ?」

 こいつの魂を、汚したくないから。

 ……

 …………

 ――――かんっぜんに下手こいたナァ。

 ソファーに身を沈め、天井を仰ぎ見る。
 屋敷のそこら中から、クスクス、ケタケタと、無様な主を嘲笑する小鬼共の声が響くが、いちいちそれを恫喝するのも面倒だ。

 ただの思い付きっってわけでもなかったが、今思えば、どうしてあんなことを言っちまったのか。
 関係性が崩れなかったことに安堵する自分がいるあたり、自分の女々しさに、自分を殺したくなる。まぁ、死ねねぇんだが。

 そう。俺は死ねない。死なないんじゃない。簡単にゃ死ねない。
 もとより悪霊。それが混沌で受肉しただけで。この心臓が本当に”人”のソレと同じなのかも知らないデタラメな存在だ。
 そこにきて、魔性の契約、眷属化、そして得た主と同等の不死性。
 さすがに冠位魔種やら滅びやらと直接ぶつかりゃ一発だが。
 寿命という意味では、俺の時間は、わけのわからないもんになっちまった。

 じゃあ、ハンナはどうだ。
 アイツは、たぶん違ェ。まっとうな”人”だ。
 俺とアイツの時間は違う。
 つってもそれだけなら、幻想種や精霊種なんてもんがいる混沌じゃ珍しくもネェことだ。おセンチ気取ることもネェ。

 だが。俺は悪霊だ。
 この先も共に在れたとして。
 俺とともにいて。アイツの魂が、報われるのか。

 神様なんざ信じネェ。
 生まれ変わりなんてモンがあるかもしらネェ。
 だが少なくとも、俺がアイツの魂を食っちまえば。それはもう、”アイツ”じゃない。
 これまで食った魂をそのままに取り出せるか? 無理な話だ。
 ただの食事と同じように消化されるか。
 俺の中で変質したナニカになっちまうか。

 それを、俺は望まない。
 だが、俺の中で、「アイツと共に在りたい」「アイツを食いたい」という欲がいて。
 きっと、アイツはそれを否定しない。
 もしかしたら、「自分を食べろ」と言うかもしれない。
 そう言われた時。
 俺は抗えるのか。
 食っちまって。
 その先に。
 終わりのない孤独に耐えられるのか。

 もしかすれば。
 食べなければ。
 生まれ変わりというものが本当にあれば。
 あいつと同じ色の魂に、遠い未来、また会えるかもしれない。
 だが、そいつも今のアイツじゃネェ。
 俺の中でアイツの魂を縛るのも。
 未来、次のアイツを縛るのも。
 だから。
 それならいっそ、今のうちに。

 そうさ。最初から間違ってるんだ。
 アイツと分かれた先の孤独?
 違ェだろ。
 悪霊がお手手とりあって仲良しごっこなんざしてるのが、元々おかしな話なんだ。
 俺は、元々孤独だった。
 これからも、そして、アイツと分かれた、その先も。
 ぬるま湯に浸かっちまって家猫になり下がった腑抜けが、野良に戻るだけ。

 …………そう、思ったんだが、な。

 今くらい。浸からせてくれよ。
 だってよ……アイツの隣は、本当に、本当に。居心地がいいんだよ。
 俺なんかにゃもったいないくらいに。

 あいつが元の世界に戻るか。
 逝っちまうか。
 別れの、その時まで。

 ……その時どうするかなんざ。
 今の俺にはわからネェけどヨ。

 ……捨てられねぇよナァ。
執筆:ユキ

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