幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
空翼(ソラ)を求めて
空翼(ソラ)を求めて
クウハとハンナさんの日常。
https://rev1.reversion.jp/interlude/detail/361?story=798
上記幕間から
https://rev1.reversion.jp/guild/1335/thread/21246
こちらのRPを経て恋人関係になりました。
関連キャラクター:クウハ
- 突然
- 「ナァ、ハンナ」
彼は、悪霊で。きまぐれで。
「他に好きな奴ができたから、別れてくれるカ?」
いつだって、突然だ。
……
…………
読んでいた本を閉じ、顔を上げる。
テーブルをはさんで向かいのソファーに座る彼は、カウチに肘をつくでも、テーブルに足を載せるでもなく、こちらの目をじっと見つめている。
しばらくその目を観察し。
―――フゥ。
思わず息が零れる。
「……わかりました。」
そう返せば。ポケットの中に入れたままの手が、落ち着かないように一度動く。
「……いいのカ?」
そう聞いてくる彼に。
「いいわけないでしょう?」
ぴしゃりと言ってやる。だってそうでしょう。
「試されて、いい気持ちになる彼女がいると思いますか?」
ましてや。自分から聴いておいて、そんな、辛そうな顔をしておいて。
「……バレバレか。俺も平和ボケしちまったかなぁ。恋人一人騙せねぇんじゃ、悪霊様が形無しだぜ。」
そうやって、大げさに肩をすくめて、冗談めかしてみせて。
「悪ィ悪ィ。詫びになんでもすっからヨ。」
そうやって、テーブル越しに私の手を取り、その甲に唇を落として見せる。
でもね、クウハさん。
「……じゃあ、別れましょう?」
その瞬間。私の手に触れる、彼の冷たい手が一瞬震えた。
しばらく返事はなくて。
彼の手が静かに私の手を離そうとしたところで。
強く。強く握り返してあげる。
「……ね? 気持ちのいいものじゃないでしょう?」
そう言って。
彼が好きだと言ってくれる羽を羽ばたかせて。
テーブルを越え、彼の元へと渡り。
その、私より大きな背を、抱きしめて。
「これでお相子です。だからもう、こういうのは、ナシですよ。」
「……あぁ。悪ィ。」
もう、言葉にしてはダメですよ。
だって、貴方は。
私が望めば、簡単に手放してしまうから。
私がいつでも離れられるように、縛らないように、線を引いてしまうから。
どこかで、諦めているから。
自分は、悪霊だから。
誰かと幸せになんてなれないと。
でも。
それでいて。
独りになることに、臆病だから。
私を見る時の貴方の目はね。とっても正直なんですよ。
本当に別れたいなら、もっと、覚悟とか、私への申し訳なさとかが、滲んでいたんでしょうね。
さっきの貴方の目にあったのは、悪戯をした時の、不安を隠した子どものソレ。
大丈夫ですよ。
元々、私以外にも大切な人、離れられない人がいるって。最初からそう知りながら付き合っているくらいなんですから。簡単に捨てられると思わないでくださいね。
……大好きですよ。クウハさん。
……
…………
でも。
だからこそ。
もし。
もしも、貴方が。
本当に、私以外にもっと好きな人と出会えたなら。
それが、貴方と一緒に歩ける人だったならとも、思うんです。
私はたぶん、貴方と同じ時を生きられないから。
たとえ混沌の滅びを払えたとしても。
その争いで、命を落とさず、平和な日々を過ごせたとしても。
いつか……貴方を置いて、逝ってしまうから。
……貴方とずっと一緒にいたい。
……貴方の中に、いつまでも私があって欲しい。
……けれど。
貴方を縛りたくない。
私は貴方を幸せにします。
貴方と、幸せになります。
だから。その先もどうか。
幸せでいて欲しいんです。 - 執筆:ユキ