PandoraPartyProject

幕間

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関連キャラクター:エドワード・S・アリゼ

きこえますか
 キュルル キュルルル……

 不思議な声で少年は眠りから目を覚ました。
 カーテンから射し込む白い月光が、時計の文字盤を明るく照らしている。
 まだ深夜と呼べる時間だ。
 少年は寝台から起き上がると傍らに置かれた大きなバスケットを覗き込んだ。
 妙な胸騒ぎがしたのだ。
 案の定、バスケットの中は空っぽだった。
 普段ならぷうぷう寝息を立てているはずの赤いワイバーンの雛がどこにも見当たらない。
 少年は、エドワード・S・アリゼは、しわくちゃのブランケットに触れた。
 まだほんのりと温かい。
 冷たいスリッパを履き、急いでガウンを羽織りながら部屋を出る。
 満月であったことが幸いしてか、明かりは必要なかった。
「コト、やっぱ此処にいたのか」
「ピィ……」
 雛はウッドデッキに座っていた。
 ゆっくりと振り向いた雛の顔に普段の快活さは見当たらない。
「お月さま、キレイだなー」
 後ろからコトを抱きかかえるようにして、エドワードはのんびりと月を見上げた。
 最近、夜になるとコトは外に出ていく。そしてどこか遠くを見つめているのだ。
 コト自身も、どうして自分が夜中に外に出てしまうのか理解していない様子である。
 一度、デザストルにコトを連れて話を聞きに行った方が良いのかもしれない。
「わたしも、お月見の仲間に入れてもらっても良いですか」
 同居人の声がして、エドワードは穏やかに振り返った。
「悪い。起こしちまったか? エア」
 ショールを肩に羽織った白い少女が微笑みながら首を横に振った。
 抱えたお盆のうえには湯気のたつマグカップが三つ並んでいる。
「ココア、淹れてきたんです。良かったら飲みませんか」
「へへ、サンキュ」
「ピャイ」
 甘い香りに包まれながら、二人と一匹が並んで丸い月を見上げる。
 秋が、終わろうとしていた。
 
執筆:駒米

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