PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

指折り数える日々

関連キャラクター:ジョシュア・セス・セルウィン

ひみつ
 リコリスがオーブンを開けると、香ばしい香りがふわりと漂った。ジョシュアも一緒に中を覗き込むと、パイが綺麗な茶色に色づいているのが見えた。

「できたわ」

 リコリスの明るい声に頷いて、ジョシュアもポッドからハーブティーを注ぐ。優しい色がカップを満たして、それから二人で席についた。

 パイを食べさせてくれるとは聞いていたけれど、パイの中身はまだ教えて貰ってはいない。「食べるまでの秘密」だそうだ。
 パイから甘い香りはしないから、多分、お菓子ではない。深い器の表面を覆うようにパイがかけられているから、中身は水気が多いものだろうか。

「「いただきます」」

 わくわくしながらスプーンをさすと、パイがさくりと破れて、茶色の中身が見えた。すくってみると、とろりとしたルーと共に肉と人参が現れる。

「パイシチュー、ですか?」

 正解、とリコリスが笑う。ジョシュアもつられて微笑んで、パイとシチューを口に運んだ。
 さくさくのパイがシチューと絡まって、食感が変わっていく。シチューも具材が柔らかく、ルーに食材の味が溶けだしていて美味しかった。

「ジョシュ君、いつも美味しそうに食べてくれるから嬉しいわ」
「リコリス様の料理はどれも、とても美味しいので」

 素直な感想を口にすると、リコリスは顔を赤くして、ハーブティーを一口飲んだ。

「美味しい。これ、ミントティーね」
「ええ。ハーブ園に行ったときに買ってきたものです」

 ジョシュアが持ってきたのは、ミントとカモミールの二種類だ。リコリスが「飲むまでの楽しみにしてみたい」と言っていたから、何のお茶を持ってきたかは秘密にして、ミントティーを淹れたのだった。

「カモミールは後ほど淹れますね」
「ありがとう」

 ハーブ園で見たものを話しながら、パイシチューを食べる。胸の奥まで温かくなるようで、ほっとする時間だった。
執筆:椿叶

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