幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
指折り数える日々
指折り数える日々
関連キャラクター:ジョシュア・セス・セルウィン
- 景色
- ジョシュアがアイスティーを淹れて席につくと、カネルが膝に滑り込む。リコリスはその様子に微笑んで、紅茶に口をつけた。
「美味しいわ。ありがとう」
「いえ。こちらこそ、マドレーヌをありがとうございます」
リコリスの作るマドレーヌは温かい味がする。心の奥がほどけていくように思えるから、好きだった。
「そうだ、今日はこれを。暑中見舞い、です」
お土産を渡すのは、少し緊張する。だけど胸が温かくなっている今は、すんなり渡すことができた。
「お花と、絵はがきかしら」
彼女の目が驚いたように見開かれて、それからそっと細められる。柔らかく浮かべられた笑みに、ジョシュアも思わず表情を崩した。
ジョシュアが渡したのは紅紫の花と、その花たちが描かれた絵はがきだ。以前ヘルムスデリーを訪れたときに見つけたものだ。
「綺麗ね。貰っていいの?」
「ええ、勿論です。この景色を、見せたかったので」
ありがとう、嬉しいわ。そう言って見つめられると照れ臭くなる。だけど、彼女が丁寧に花や絵はがきに触れているのを見ていると、こちらも嬉しくなった。
「何て言うお花なのかしら?」
「これはヒースと言って――」
その時の出来事や、見たもの、感じたことをゆっくりと言葉にしていく。リコリスが穏やかに話を聞いて、そっと笑みを浮かべてくれるのが、心地よかった。
- 執筆:花籠しずく