PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

指折り数える日々

関連キャラクター:ジョシュア・セス・セルウィン

クリームパン
 楕円形に伸ばしたパン生地にカスタードクリームを乗せると、バニラの香りがふわりと立った。香りごと閉じ込めるようにしてパン生地で包み、天板に並べてオーブンで発酵させる。
 発酵させている間は、カネルを撫でながらリコリスにパン教室の話をした。大切な人に食べさせてあげたいと思って教わるお菓子作りは心が躍ったものだ。だけどそれを伝えるのは恥ずかしくて、作ってみてどうだったのかということや、そこにいた人とのやりとりばかり話してしまう。

 発酵が終わったら、薄く卵を塗り、生地をオーブンで加熱する。
 お菓子作りは料理より不慣れだ。でも、クリームパンを食べたことのない彼女に美味しいものを食べさせてあげたくて、パン教室のことを思い出しながら頑張った。
 美味しくできていますようにと祈ることしばらく。オーブンを開けると優しく色づいたパンが出てきた。

「わあ」

 リコリスと顔を見合わせて、にこりと微笑み合う。あついあついなんて二人で言いながら焼きたてのパンをちぎって頬張ると、甘くて優しい、ふわふわとした味が口の中に広がった。

「美味しい」

 そう呟く彼女の表情は本当に嬉しそうで、胸の内にじわりじわりと温かい気持ちが溢れる。

「今度お礼にお菓子作ってあげるわ」

 そう言うリコリスの笑顔はきらきらとしている。リコリスの方がカスタードを美味しく作れるだろうと思って、「カスタードを使ったお菓子を食べたい」と素直に言うと、彼女は楽しそうに頷いた。
 思いがけず出来た楽しみに、ジョシュアもまた笑みを浮かべるのだった。
執筆:椿叶

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