幕間
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Trick and tricks!
Trick and tricks!
揶揄い好きな悪霊とイレギュラーズ達のお話。
関連キャラクター:クウハ
- 時には兄貴分として
- 「いや、なんでだよ?」
思わずそう言った俺を、絶対誰も責められない。これは確信を持って言える状況だった。
片手に強く手首ごと握ったナイフ、らしくなく垂れる汗。
壁に押し込んだ目の前の男が、たった今、夢から覚めた顔をしている。
後ろからナイフが音もなく引き抜かれ、美しい商人が優しく名前を呼ぶ。
俺はその声に従って男__京司の手首を掴み直してゆっくり起き上がらせる。
ほぼ無抵抗なその姿に胸がざわざわするが、無視して客間のソファまで抱える。
「ちょっとびっくりさせたかった……訳じゃねえな?」
「…………うん、なんか。恋人が出来て、それで笑っていられて……そしたら……………」
「思ったよりも難儀だね、トキ。幸せ慣れ出来なくて死にたくなるって?」
流石の商人でもこういった形で京司の衝動が出るのは予想外だったらしい、顔こそ笑っているが声は硬い。
元から死にたがる性質の京司に恋人が出来た、と聞いた時は少しは落ち着くかと思った矢先だった。
「良いんだ、良いんだよ。幸せを感じても良い」
「あァ、そうだとも。幸せを恐れなくて良い。それに……」
セパードはきっと、そんなトキも受け入れてくれるさと商人が囁いてやっと京司は力を抜いた。
京司はまだ、恐れることが多いんだろう。だから眠りと自傷へ逃げる。
それでもいつか、と柄にもなく願いを込めて眠り落ちた頭を撫でた。 - 執筆:桜蝶 京嵐