PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

Trick and tricks!

揶揄い好きな悪霊とイレギュラーズ達のお話。


関連キャラクター:クウハ

WARNING! WARNING!
(あ、ヤバいなコレ)

 そんな事を思うのは何時だって唐突だ。
言うなれば、長い事火にかけられていた鍋が突沸するみたいな。膨らみきった風船が割れる寸前みたいな。

これが派手にゴミ箱をぶちまけてスッキリするレベルならば良いのだが、その程度では済まないのが悪霊の困った所だ。しかもあと少しでも放置したら大爆発すると自覚がある癖して、妙に冷静な自分に反吐が出る。

 標的を探して周囲を見れば、ああ、なんとタイミングが良いのだろう!
ソファーに深くかけて、雑誌を読む者が居るではないか。
ああ、なんてタイミングが悪いのだろう!
今日のターゲットはお前に決定だ。悪いな大地クン。

「何読んでるんだ?」
「グラクロのスイーツ特集」
「へェ、俺も見ていいか?」
「ん」

短い肯定を受け、自身もソファーに腰を沈める。
その後しばらくは『これは美味そうだ』だの『ここはちょっと遠いなあ』だの『いくら何でも盛りすぎなんじゃね?』だの言い合っていたが。

 少し気怠い昼下り。大地が大きく伸びた瞬間。そこをクウハは逃さなかった。
突如ズシンと腰に乗る一人分の重み。目一杯背伸びするために伸ばした両手首も、ソファーの縁にぎゅうっと押し付けられて。

「えっ、クウハ……?」

答えの代わりにそっと、首を囲う凹凸に指を這わせる。通常の生命を持たぬ者の手付きに、青年の体はぴくんと震えた。

「ヒヒッ、悪いようにはしねェよ」

赤い瞳は動揺に揺れていて。赤い瞳はエモノを逃さず捉え続けて。
口元は三日月を描いて、猫のように爪を立てて。

その首を、思いっきり……擽る!!

「えっちょっクウハ!!!??」

振り払う手は既に封じられている。

「あひゃひゃ、ん、っふふ……! だめ、だめだって……!」

身をくねらせて逃れようとするが、腰の上に乗る体重がそれを許さない。そう、大地は突然の擽り地獄に落とされたのだ。

「おりゃ!! こうか、ココがいいのかァ!?」
「も、ごめっ、……もうやめて〜!!」

 さて、そこから針を少しばかり進めて、時刻は鳩時計はおやつの時間を告げる頃。
革張りのソファーの上に寝転んでいるのは、びくびくと震える細身の身体。
あちらこちらに広がる赤と黒の乱れ髪。ヒー、ヒーと、絶え絶えに甲高く息をする姿。目尻に少し残る涙。

ヤマシイコトハシテマセン。コレハホントウデス。

まあでも、大地が大層いい反応をするので、これはこれでスッキリした。したのだが……。
そういえば、『くすぐったい』と感じるか否かは、擽る側と擽られる側の関係に大きく依存すると言う。
確かに俺だって通りすがりの知らねぇオッサンに脇腹を擽られても擽ったくない。どころかキモい。

大地に関して言えば、首はむしろ致命傷を負った部位であり、そこに触れるものを威嚇しても何ら不思議はないのだが、あの反応はむしろ……。

「大地。俺が言うのも何だけどさ、ちょーっと隙あり過ぎじゃねぇの?」
「えっ……?」

洋館の主はムシャクシャモードから一転、今度は心配モードに入ってしまうのだった。

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