PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

Trick and tricks!

揶揄い好きな悪霊とイレギュラーズ達のお話。


関連キャラクター:クウハ

Overdose
 美しい花に擬態し、留まった蝶を喰らうものが居るように。日常のひょんな所に、罠はいつだって潜んでいるものだ。
今回の犠牲者……もとい、大地の場合は、クウハと武器商人の前に並んだ砂糖菓子のような『ナニカ』を見て、興味本位で『何だそれ?』と聞いたのが運の尽きだった、の一言に尽きる。

いや、大地にとってもっと不幸だったのは、その言葉を発した瞬間、彼等の口元が描いた三日月、その真意に気づけなかったことかもしれない。

「あー、説明するより食う方が早いだろ。ほい」

クウハから差し出された柘榴色の結晶。それを口に入れた瞬間。
──びりり、と舌から全身を駆け巡る衝撃。

「ッ……!? 何だこれ、グレープソーダ味と似てる、けど、どこか違う……?」

目を白黒させる大地の姿に、上弦の弧を描いた目がニヨニヨとその姿を見守る。
今度は下弦の月の唇が、ゆるりとにじり寄る番だ。

「ふぅん、仮にも死霊術師に鍛えられてる身。これくらいは軽いものって所かねぇ。じゃあ、これはどう?」

武器商人が『あーん』の言葉とともに大地の口元へと近づけるのは、菫色に透き通った飴玉のような『ナニカ』だった。

「あの、銀月さん……俺、自分で食べれますんで……」
「おい、俺の御主人の出すモンが食えないってのか? ああん??」
「うわ……新手のパワハラかな……」
「およし。何も大地の旦那を威圧する必要はなかろ?」
「……ま、いっか。これも社会勉強ってやつだ。頑張れよ大地クン?」

 何を、と聞き返す間もなく口内に広がるのは、口内で薔薇の花が咲き誇るような、甘く濃厚な香り。眼の前に広がる、月明かりのようにぼんやりとした菫色。
その感覚が、体を駆け巡る。巡って、回って、視界が、眩んで……。

「あーあ、こっちはまだ早かったかねェ」

嗤うチェシャ猫の声は、すでに遠のき意識の外。次にがばっと目を覚ましたのは、赤羽の方だった。

「やァ、赤羽の旦那。ご機嫌いかが?」
「最悪に決まってるだろバカヤロウ」
「因みにまだまだあるけど、もう一個食べる?」
「もう結構ダ!!」
「それは残念」
「御主人」

あー、と口を開き待ち構えるクウハの姿に、満足気にソレは、先程大地に与えたものと同じものを、眷属たる彼へと差し出していく。
与えられた側のその顔は、まるで主人に甘えねだる猫そのもので。

──そりゃあお前等なら問題ねぇんだろうがなァ。ただの人間にンなモン差し出すんじゃねぇヨ!

だって、人の形をしたそれらが食らっていたものは。
人間風情が、数回人生を送った程度では作り得まい。
ぎゅうっと押し込められた、魔力の欠片、なのだから。



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