PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

Trick and tricks!

揶揄い好きな悪霊とイレギュラーズ達のお話。


関連キャラクター:クウハ

SOUL DROPS
「やっぱりさー、その髪と目を見ると……『イチゴ』なんじゃねェか、って思うんだが」
「おいおイ、色からのイメージとは随分と安直だなァ。俺としちゃああえて『レモン』を推すゼ。『檸檬の爆弾』とか好きだろウ、コイツ」

 洋館の一スペースで、何やら膝を突き合わせて談笑を繰り広げているのはクウハ、そして『赤羽』だ。

「あのさ、二人とも」

その時、二人の間をどこか怯えたような、震えたような青年の声が遮った。

「なに勝手に人をフルーティーに味付けてくれちゃってるんだよ……やめてくれよ……」

しかし、その言葉に二人の口の端は、ニヤリと釣り上がるばかりだ。

「心配するなよ『大地』、食い残してその辺の生ゴミにするこたぁないからよ」
「そうそウ。言ったロ、魂の取扱なら俺は超得意なんだからナ!」

温厚な青年たる彼を今挟んでいるのは、意地悪な悪霊と性悪な死霊術師。
しかも死霊術師……『赤羽』とは肉体を共にする関係であるので、尚更逃げ場がない。ヤバい詰んだ。

「まあ、良い感じに味付けできたら教えてくれや。俺も仕上がり、気になるからさ」
「あァ、中途半端なモンを出さねぇようニ、味見もちゃーんとしておくサ。……尤モ、味見のし過ぎで無くなる可能性もあるがナ!」
「おいおい、コックが客に出すメニューを先に全部食っちまうとかアリかよ?」
「コックである以前に美食家だからなあ俺ハ。けどそれはお互い様だろウ?」
「こいつら……」

はあ、とため息をついて一旦席を立つ。とはいえ、自室に戻るわけでもなく、その足はキッチンへ、そしてその手はケトルに伸びていく。

「おっ、何か飲むのか大地? 俺の分も湯を沸かしてくれよ」
「えっ、ああ……別に良いけど……」

 頼み事の内容自体はともかく、さっきまでどうやって『食う』か話していた食材張本人に、どういう心情でその発言をしているのだろう?

コンロに火を灯しながらちらりとその表情を盗み見るが、クウハはこちらにニヨニヨ笑いかけるばかりで、その奥までは読み取れない。

『あちらさんが先に正々堂々【悪霊】と名乗ってくれてるだけ良心的なんだゼ。お前が興味を持つのは勝手だガ、深淵を覗く者はナントヤラ……っつー大先生の言葉、忘れるんじゃねぇゾ?』

……とは、他ならぬ相方の言葉だが。

はあ、とため息をついて、不意に吹き込んだ秋の風に身を震わせる。

「……クウハ、今日はロシアンティーにするか?」
「おう、良いぞ。フレーバーはあるの適当に使っていいからな」

その言葉にこくんと応えると、沸かしたてのお湯をポットに注ぎ、ゆっくり茶葉の味と香りを出してから、ティーカップへ注いでいく。

仕上げに紅茶にぽとりと落とされた、そのジャムの色は。

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