PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

Trick and tricks!

揶揄い好きな悪霊とイレギュラーズ達のお話。


関連キャラクター:クウハ

シャッターチャンス!
「クウハさん。写真の撮り方は、ご存知ですか」
 ギルドでくつろいでいたクウハに対し、ハンナは両手で生真面目に、aPhone<アデプト・フォン>を差し出した。飾り気のない外観とロック画面は、おそらくローレットから支給された物だからだろう。
「おーおー、オマエさんが俺を頼ってくれるなんて嬉しいねェ」
 ニカリと口角を上げる彼に、ハンナはぴんと来ない様子で首を傾げる。
「はあ。……依頼で、証拠写真を撮ってくるように言われたんです。しかし、使い方が分からなくて」
 aPhoneを受け取ったクウハは、早速いろいろな場所をいじりだす。
 尤も、それには最低限の機能以外は備え付けられていなかった。やはり支給品のようだ。この確認作業はaPhoneの性能を確かめるためであって、あわよくばハンナの趣味嗜好を探ろうとしたわけではない――はずである。きっと。
「どうでしょうか?」
「大丈夫だ、難しいことじゃねェよ。このカメラっていうのを触ってから、下の丸を押せばいいだけだ。――ほら、こんな風にな!」
「ひゃっ!?」
 不意打ちじみた撮影は無事成功し、つんとした表情の写真が一枚と、突然の光と異音に驚いた写真が一枚、アルバムに収まる。
 あわあわとした驚き顔は、冷静沈着たろうとする彼女からはあまり引き出せないものだ。普段は伏し目がちの瞳はぱっちりと見開かれ、固く引き結ばれていた唇は無防備に綻んでいる。これにはクウハもご満悦である。
「一体何をして……また撮りましたね?」
「いや、今のはインカメで自撮りした」
「インカメ? 自撮り?」
 意気揚々とクウハが見せたaPhoneには、ウインクを決める彼の姿が映っていた。周りには光の玉が浮かんでいる気がするし、空間が奇妙にねじれている気もする。
 立派な心霊写真を見せられたハンナは、思わずこめかみを押さえた。
「教えてくださったことにはとても感謝しています。ですが、写真は消してください」
「こんなに可愛く撮れてるのに?」
「依頼人の方にこれを渡してどうするんですか」
「……そりゃそーだな」
 人を揶揄うことを好むクウハとて、自分のせいでハンナが怒られてしまうのは望むところではない。
 写真を消す方法も教えながら、まずは自撮り写真を削除して……それでも、ハンナの写真を消すのは、無性にもったいない気がしてしまうクウハであった。
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