PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

Trick and tricks!

揶揄い好きな悪霊とイレギュラーズ達のお話。


関連キャラクター:クウハ

曰く「誰が何とゆおうとシャイネン・ナハトだぞ」
 ――森の洋館に突如、陽気なステップで来客が来た。
 紺の帽子を被り、茶色い髭を蓄え、後ろに垂らしているのはビチビチ動くドデカい魚。
「メシーー食べ済まーーす!!」
 そう言って厨房をドバンと開けたのは深海・永遠だった。
「は??」
 晩飯の支度をしていたクウハがドン引きした顔で振り向く。
「ほら、シャイネン・ナハトの時期じゃんか」
「そうだけどよ、その格好なんだよ」
 何もかもニアピンしたかのような珍妙な永遠の格好を指差すクウハ。
「クウハにお菓子作ってやろうと思ってさ! この前のぶん!」
「あー、冷蔵庫ン中ただ食い事件な。しっかりと覚えてるぜこの野郎。で? そのマグロっぽい魚でお菓子作るってか?」

「のんのん、これはシャケだぞ!」
 まな板の上にドゴォーン! という衝撃音と共に置かれる大物のシャケ。とてもシャケから聞こえる効果音ではない。
「シャケぇ!?」
 グッタリしているが、確かに良く見るとシャケだった。

「まず、さばきまーす」
 永遠は紺の衣服に血が飛ぶのも構わず厨房を使用してシャケを捌いていく。
「おい、使用許可は?」
「今とる! いい?」
「あいよ、どうぞ――って子持ちじゃねェかこのシャケ」
 子持ちのシャケ(雌、享年5歳)から丁寧にイクラを取り出す永遠。そして、既に炊かれていたご飯を水に浸した後の手で一握り取り、丸く形作ってから海苔を巻いて、上にイクラを天女の羽衣のようにそっと乗せたら――完成。
「できた!! かんせーです!!」
「ってこれイクラの軍艦じゃねェか!!」

 きょとんとした目で永遠は見つめる。
「え? 何ゆってんのクウハ。たまご料理だからお菓子だろ?」
「多分お前の言う『たまご』は何か履き違えてるぞ……っていうか海の生き物は大体友達って言ってたよな? 大丈夫なのかお前の論理観的に」
「オレが食べるぶんにはイヤだけど、クウハが食うぶんだからいいの! あとコイツ川にいたから半分セーフよセーフ」
「産卵のために回遊してただけだぞソレ。ま、いいか……良くこんな大きいシャケ見つけられたな永遠、何センチあるんだよ?」
「んーっとね、2.5めーとる」
「並のマグロよりでけェな本当良く見つけられたな!? それはいいとして食べるか……折角作ってもらったんだしな」
「たんとおたべ! まだまだ作るかんな!」

 ぷりっ。流石2.5メートルのシャケ、イクラも説明不要のデカさ。普通の米でなく酢飯で食べたかったと思いつつも、クウハは美味しく食べていく。
「うめぇ……」
「あいよ5貫目おまちぃ!」
「ん、お前の気持ちは良く分かったぜ永遠」
「あいよ10貫目おまちぃ!」
「だがな良く聞いてくれ」
「あいよ20貫目……なに?」
「晩飯作ってる途中でそんなに食ったら入らないどころか作れねェーーーッ!!」

 永遠、ポカンとする。
「……じゃあオレも晩ごはんつくろっか?」
「いや、いい。折角の永遠の気持ちだ、全部食べねェと気が済まなくなってきた」
「無理すんなよーっ!?」
「何のイクラの軍艦ぐらい! おかわり!」
「はいよ!」
「おかわり!」
「はいよ!」

 わんこ軍艦を食べきったクウハは、その後作ろうとしていた晩飯を一旦冷蔵庫にそっとしまったのであった。

「そんじゃクウハよいシャイネン・ナハトを! また今度なー!」
「おい待てよ、うっぷ……ご馳走様でしたァ!!」
執筆:椿油

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