PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

Trick and tricks!

揶揄い好きな悪霊とイレギュラーズ達のお話。


関連キャラクター:クウハ

夏至のころ
「……直りそうか?」
「ふむ。内部の術式が想定外の汚れで機能不全に陥ってたみたいだ。すまないね、自動洗浄機能が甘かったか……」

 クウハの主人であるソレは、森の洋館にあるクウハの自室に取り付けられた装置に手を当てて申し訳なさそうに眉を寄せた。白く嫋やかな手が触れているのは一見すると水晶で出来たウォールランプの様な代物だが、その実態は魔術を用いて部屋の換気や室温調整を行う……練達で言うエアコンである。クウハの主人が取り付けたものだ。

「あー、この間の襲撃の余波でどっかしらイカれたのかもな。慈雨が謝ることじゃねえよ。居住区の魔術を持ち出してもらってんだから、こうして診てもらって感謝はしても文句なんて出ないって」
「そうかぃ? ……一応、他の部屋のも診た方が良さそうだね」
「悪いな、頼むよ。森の中とはいえこれから夏だしな」
「それで対価なのだけど」
「おう、何でも言ってくれ」
「この間言ってたレモンのジェラートを作ったから、その味見で」
「甘やかしに甘やかしを重ねる対価は完全にレートがおかしいんだよなぁ」

 クウハは呆れ顔で天を仰いだ。嫌ではないし嬉しいが、不安になる。色んな意味で。

「……ちょうどアイスティーを作りたいと思ってたんだ。ジェラートも一緒に食いてぇしその時に対価に入れていいかい、ご主人サマ」
「いいのぉ?」

 無邪気に喜ぶ主人の姿にクウハは苦笑しながら甘える様に頬を寄せる。ほんのりと暑い季節なんてものはその実、この甘やかさの前では些細な問題だった。
執筆:和了

PAGETOPPAGEBOTTOM