幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
Trick and tricks!
Trick and tricks!
揶揄い好きな悪霊とイレギュラーズ達のお話。
関連キャラクター:クウハ
- ある日の君と
- 「ク・ウ・ハちゃーん!」
ぼん、と軽い衝撃とともに後ろから抱きつかれる。
誰彼構わずちゃん付けで呼び、テンションの高いこの喋り方はひとりしかいない。
「よう、ファニアス。久しぶりだな」
今日はどうしたんだ、と振りかえりながらふわふわの髪を撫でる。
そっとクウハから離れたファニアスは、入り口に置いたトランクケースを持ってくる。
「それがねえ、新しい小物類を仕立てたんだけど京司ちゃんも商人ちゃんもいないんだよ▲」
「あー、なるほど。だから此処なら来てるかもって?」
ファニアスはサヨナキドリの商売人であり、同時に仕立て屋だ。
スタッフの制服なども直したり調整もしているらしい。
衣装持ちのクウハも時々、服や靴のメンテナンスを依頼していた。
「残念ながら今日はまだ来てねえな。約束もねえ」
取りあえず茶でも飲むか、と誘うとお願いするよ、と明るい返事が返ってくる。
クウハが茶の準備をしていると、ファニアスが「そうだ」とトランクケースを開く。
「せっかくだからクウハちゃん、ちょっと見てみる?」
「良いのか? 気になってたんだよな、ファニアスの作品」
紅茶を淹れ終わって見せて貰った試作品はアクセサリーだった。
指全体を覆うリングにブレスレットとリングが一体化したもの。
柔らかな布地で作られたヘアアクセサリー。
夏に向けてか、素足に付けるアクセサリーもあった。
「このリング、強そうでいいな。好みだ」
クウハが手に取ったリングは俗にアーマーリングと呼ばれるもので、指全体を覆う。
削りで模様を入れ、先端を尖らせた形だ。
「ここには持ってきてないけど、クウハちゃんには指全部にリングを通すタイプのリングブレスレットが好きかもね¶」
そうして二人でアクセサリー談義をしていると、ひょっこり商人がやって来た。
「おや、来ていたんだねえ」
そこで三人でお茶会兼試作品評議会となったのだった。
商人はだいたいの物にOKを出しながら次の仕事をファニアスへ頼んだ。
「アジアンカフェのコたち用に幾つか頼めるかい? 髪が長いコが多いからヘアアクセサリー多めで」
「ええ、任せて♪ カトルカールちゃんが店長の奴だよね?」
あのコも長いもんね、とファニアスは頷いて納期や雰囲気を聞く。
それから席を立つとトランクケースを閉める。
「さっそくデザイン考えてくるねん§ クウハちゃん、ご馳走さま。またね~~†」
次の新作が楽しみだ、と商人とクウハは元気良く帰るファニアスを見送った。
- 執筆:桜蝶 京嵐