PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

突撃!隣の盤を後破産!

悪人共になら何やったって構わねェよな!とばかりに
凶行を愉しむ2人の話。
例え普段の様子がどうであろうと
根はまごう事なき「悪」なのである。


関連キャラクター:クウハ

カウントダウン
 本来なら無人の廃倉庫に、二人の人間がいた。
 一人は男だ。両手両足、口元までもが厳重に拘束され、身動きもできず床に転がっている。
 もう一人の女は木箱に腰掛け、男には目もくれず、膝の上に乗せた装置を弄っていた。目深に被ったフード故に、彼女の表情を窺い知ることはできない。忙しなく動く手指だけが、一心不乱に作業に没頭する様子を示していた。

 不意に、足音が近づいてくる。
 助けが来たのかもしれないと、倒れた男は一縷の光を見出す――が、自分を痛めつけた青年が目に入った瞬間、容易く希望は打ち砕かれた。
「その顔、全部終わったみたいね? お疲れさま。頼まれた物もちゃんと作っておいたわよ」
「ああ。ありがとな」
 クウハはきゐこに笑みを向け、倒れている男にも気安い挨拶を投げかけた。
「よっ。お前が『教えてくれた』お陰で、手っ取り早く爆弾を設置できたぜ」
 男の顔が絶望に染まる。そして必死にもがき、声なき声で主張した。――話が違う、と。
 クウハはにやついた表情を崩さぬまま、男の脇腹に蹴りを入れる。当然のように傷口を狙った蹴りだった。
「おいおい、調子に乗るなよ。お前の爪、あと何枚残ってたっけなァ? それとも他の拷問がいいか?」
 楽しげな笑い声が反響する。……この期に及んで、男は初めて、自分が虐げてきた者の気持ちに理解が及ぼうとしていた。
「遊ぶのはいいんだけど」
 きゐこが口を開く。
「私は間近で爆発現場を見てきたいわ! 後は任せていい?」
「了解。安心して楽しんできてくれよ」
 きゐこは持っていた装置をクウハに渡すと、緑のローブを翻し、足早に立ち去っていった。クウハが仕掛けた爆弾は並大抵の数ではなかった。中にいる悪党の原型が残らないぐらいに、アジトが大爆発する光景は、きっと彼女の期待に適うことだろう。
 男の目の前に装置が置かれる。前面にはモニターが取り付けられており、無機質に「01:00」と表示していた。
「お前のアジトに設置した爆弾の起爆装置だ。遠隔式で、これを壊せば爆弾は爆発しなくなる。ほら、ドラマとかで一度は見たことあるだろ?」
 クウハがボタンを押すと、カウントダウンが始まる。
「赤の線と青の線、果たしてどちらでしょうか――ってなァ!」
 裏切られたばかりの彼の言葉を信じられるほど、男は純粋ではなかった。装置を壊して喜んだ矢先に、本当は嘘しか言ってなかったのだと、あの青年は嘲笑してみせるに違いない。それでも選択肢は一つだけだった。たとえ弄ばれているとしても、存在しない筈の希望に賭ける他は……。
 男は身を捩り、どうにかして装置をこじ開けられないかと足掻く。
 しかし、芋虫に地べたを這いずり回る以外が出来ようか?
 男の意思など露知らず、淡々とカウントダウンは進む。
 進み続ける。
執筆:

PAGETOPPAGEBOTTOM