PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

突撃!隣の盤を後破産!

悪人共になら何やったって構わねェよな!とばかりに
凶行を愉しむ2人の話。
例え普段の様子がどうであろうと
根はまごう事なき「悪」なのである。


関連キャラクター:クウハ

「毒を以て毒を、なんとやら」
 いつだったか。クウハと猪市きゐこがつるんで悪人をボコボコにとっちめた時、駆けつけた人が口にしていた言葉を思い出す。
「俺らが毒ってガラかよ」
「そうね……。悪くはないけど、まどろっこしいわ」
 きゐこは肩をすくめて、壁の残骸越しにちょっとしたパイナップルをぶん投げる。クウハはニヤッと笑い、きゐこの隣へ避難した。二人仲良く耳を塞いだ次の瞬間、怒号と罵声と爆音が響き渡る。
 場所は、某犯罪組織の一拠点。悪党どもが金を貯め込んだ隠れ家を、今まさに、愛らしいパイナップルが弾き飛ばしたところだ。
 燃えた紙幣が、それはそれは壮観に、盛大に、夜空を舞う絶景。
 悪党たちが呆然と空を見上げるサマは、間抜けでお粗末この上ない。
「ケッケッケ! 見ろよあのツラ! ざまァねぇぜ」
「インパクトは十分ね」
「そんじゃ、いっちょ……」
 クウハは得物を手に、不敵に笑った。
「遊んでくるとすっかァ♪」
 クウハが向かう先は、爆弾が放り込まれたばかりの、隠れ家の残骸だ。
 壊れかけのドアを乱雑に蹴り飛ばす。突然、煙の中から刀で武装した男が飛び出してくる。
「おぉッと」
 その攻撃をひらりとかわし、クウハは大げさに両手を広げて見せる。
 攻撃の予備動作と見たのだろう。男はぎくりと身を固め、クウハから距離を取るように大きく後ろへ下がった。
 だが。
「ばァか。ただの猫騙しだ、っつの」
 ぱちん、と、ただ一度、クウハが手を叩く。何の効力もないただの柏手に、男の緊張の糸が一瞬ぶつりと途切れた。
「てめェ!! ただじゃ死なさねえ!!」
 頭に血がのぼった男が、クウハめがけて刀を振り下ろす。だが、冷静さを欠いた攻撃は、空を切る。
「何だ何だ? 俺とワルツでも踊ってくれってか? わんつー、わんつ、ほらほら、アンヨが上手ゥ」
 ぱちぱちとからかうように手をたたきながら、クウハはひらひらと、炎の残る隠れ家の中を逃げ回る。そのたびに、刀を振り回す男が暴れて家が崩落していく。
 男をうまく誘導しながら、クウハはちらりと周囲へ目をやった。
 他にも見張りは居たはずだがな? と考えた矢先、外でまた小規模な爆発音がした。続く悲鳴と哀れな叫び声から、まぁリタイアと見て問題ないだろう。
「あーあァ。俺の居ねえところでお楽しンでやがる」
 小さくぼやいた瞬間、男がぶん回した日本刀が、クウハの頭上すれすれをかすっていった。
「テメェら……どこに、雇われた……」
 息も絶え絶えな男の問いに、クウハは軽く肩をすくめた。
「誰かの依頼でなきゃ、俺と『遊べない』って思ってんのか? 冗談キツいぜ」
 ケッケッケ、と悪魔じみた笑いをこぼし、クウハは唇を釣り上げる。
「ただの遊びだぜ? 御大層な理由なんざねェよ」
「あん、だと……」
「俺はいつでも好きな時に、お前ら小悪党をオモチャにする。そんだけさ」
 あばよ、とクウハが笑った次の瞬間。脆くなった建物は、男を巻き込んで崩落した。

「あー、楽しかった。遊んだ遊んだァ」
「死霊術持ちでも無茶したわね」
「ケッケッケ、まァ、ちっとな?」
 ホコリまみれになったクウハの顔は、ひどく晴れやかだ。
「次は何して遊ぼうかしら」
 きゐこも、屈託なく笑う。どうせ根は似た者同士だ。
 面白そうなオモチャには、飛びつかずには居られない。
 肩を並べて帰る二人は、いたずらに成功した子どものように、無邪気な笑顔を浮かべていた。

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