PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

突撃!隣の盤を後破産!

悪人共になら何やったって構わねェよな!とばかりに
凶行を愉しむ2人の話。
例え普段の様子がどうであろうと
根はまごう事なき「悪」なのである。


関連キャラクター:クウハ

汝は悪霊なりや?
 冠位色欲の勢力による影響だろう。昨日まで愛しあっていた者が、愛故に刃を向けてくることもあれば、名も知らぬ通りすがりの人物が愛を説きながら銃を向けてくる。そんな狂った隣人に脅かされる事態が散発する現在の幻想で、ローレット、イレギュラーズへと助けを求める者がいるのも、また自然な流れだろう。彼らは幻想にとっては”勇者”なのだから。


「助けてくれ! 女が私の命を狙っているんだ……! あれはきっと、最近噂の異常現象だ!」

 とあるローレット支部。カウンターに両手を叩きつけながら必死に訴える男へ、テーブルにどっかとのせた足を組みなおしながら、クウハはちらと視線だけを向ける。

「落ち着いてください。依頼でしたら、まずは正確な情報を……」
「これが落ち着いていられるか! こういうのはあんたらの専門だろう! さっさとなんとかしてくれ!」

 受付嬢の声に唾を飛ばす勢いで言葉を重ねる男に、彼女の口角も引きつっている。

「僕を誰だと思ってるんだ、父はトロン商会の会頭なんだぞ! 依頼料なら弾む。相場はいくらだ? 受付嬢の給金なら何年分にもなる額を出してやるぞ。それに、よく見れば君……なんなら、事が片付いたら君をディナーに招待してあげようじゃないか。」

 男は受付嬢の胸を舐めつけるように見ると、カウンターの上に置かれた手に自身の手を重ねようとした。
 が、その手垢が彼女の手につくことはなかった。

「よう旦那、命狙われてるとあっちゃ大変だ、すぐに解決しねぇとな。おぅ、受付の。俺が行ってやる。依頼票? んなお役所仕事してる暇なんざねぇだろ。旦那の命がかかってんだぜ? 片づけたらすぐ戻っから、そん時に適当に処理してくれりゃいいだろ。な? そうだろ、旦那。」

 いつの間にやら近づいていた紫フードの男は依頼人の手を取るや語る、騙る。

「あ、あぁ……だが、今僕は彼女に……」
「安心してくれや。こういうのは俺の得意分野だ。今からなら今日中に片づけられるぜ。そうすりゃ、今夜はお楽しみになれる。違うかぃ?」

 展開に戸惑う男の肩を組み、耳元でそう囁くクウハ。その視線が向く方へと男の視線も向かえば、そこには目の前の受付嬢の豊満な双丘が。

「……あぁ、その通りだ! 君がいてくれて助かった! すぐに向かおう! 」

 鼻息荒く支部を後にする依頼人とクウハ。


 だが、依頼人の男が再び支部を訪れることはなかった。
 クウハはしっかりと依頼をこなした。「女を食い物にする男を殺してほしい」という依頼を。

 色欲による影響? なんのことはない。そんなものなくたって、人間なんざ肉欲に溺れてやがる。クウハにとっては腐るほど見てきた、あるいは、自ら狂わせてきたものだ。

 夜闇の中、手にする人魂。

 病床で『ありがとう』と感謝を告げて、糸が切れたように逝った、元々死にかけだった依頼人からの報酬だ。
 男の恐慌はなかなかだったが、魂は腹の足しにもならない味だった。
 さて、こいつはどんな味がするかと口にしようとして、ふと過るのは、幾人かの顔。
 目隠れの主はただただ微笑んでいるだろう。
 元骨の彼も、鏡の同類も、何も言うまい。
 では、翼持つ彼女は、ラッパ吹きの彼はどうだろう。
 なにかしら理由をつけて納得するかもしれない。
 けれど。
 そもそも、何故、”誰かに” ”どう思われるか” なんてことを気にするのか。

「……たまにらしいことをするとこれだゼ。ったく。」
執筆:ユキ

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