幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
突撃!隣の盤を後破産!
突撃!隣の盤を後破産!
悪人共になら何やったって構わねェよな!とばかりに
凶行を愉しむ2人の話。
例え普段の様子がどうであろうと
根はまごう事なき「悪」なのである。
関連キャラクター:クウハ
- estar en danza。或いは、真夜中の襲撃者…。
- ●Boom!Boom!Boom!
明け方近く。
空が一番、暗くなるころ。
屋敷の裏手に、そっと近づく人影が1つ。
夜闇に紛れて、足音も立てずに裏口へと近づく輩が“まとも”であるはずがない。
濃緑色のローブをすっぽり頭から被って、顔を隠しているのも怪しい。
周囲の様子を警戒しながら、猪市 きゐこ(p3p010262)は門に近づき地面にしゃがんだ。見上げるほどに大きな門だ。材質は鉄、重さも厚さもかなりのもので設計者の“絶対に誰も通さない”という強い意思を感じる。
「門の頑強さを過信して、見張りを減らすなんて愚かなんだから」
クスクスと笑って、きゐこは懐から何かを取り出す。見たところ粘土か何かのようだ。ほんのりと甘い香りのする粘土をこねて、鉄の門に貼り付けていく。
時間にして僅か数分ほど。
闇に紛れて、人知れずに仕掛けを完了させるときゐこは門から這うようにして離れていった。
その口もとには、にぃとしたいかにも悪辣な笑みが浮かんでいるではないか。
「3、2、1……はい、ドーン!」
きゐこの歌うような声。
手元のボタンを操作した。
瞬間、空と大地が激しく揺れた。
爆発。
轟音が鳴り響き、鋼鉄の門を業火が飲み込む。大地が抉れ、鋼鉄の門が歪に曲がる。
ゆっくりと門が傾き始めた。
その重さと厚さは、確かに脅威だ。容易には破壊されぬ、守りの要だ。だが、その重さと厚さゆえ、鋼鉄の門は自壊する。
自身の重さを支えきれずに、鋼鉄の門が屋敷の方へ傾いた。
周囲に飛び散った炎が今も燻っている。濛々と立ち込める土埃の奥で、男たちの怒号が響いた。
「準備できたわよ!」
茂みから顔を覗かせて、後方へ向けきゐこが叫ぶ。
その直後だ。
「おォ! 待ってたぇ! この“瞬間”をよォ!」
クウハ(p3p010695)の声だ。
暗闇の中でエンジンが唸る。
地面を削る音がした。
藪を突き破り、飛び出して来たのは1台の黒い装甲車。屋敷の近くに停められていた装甲車で、クウハときゐこが事前に盗んでいたものだ。
猛スピードに車体が激しく左右に揺れる。
クウハは必死にハンドルを握るが、車体の制御は難しい。とはいえ、周囲に障害となるものもない。多少のロスはあるものの、ほんの数秒で装甲車は爆破された門へ到達するだろう。
「かっ飛ばしちゃって! でも、事故んないでよ!」
疾走する装甲車の荷台にきゐこが跳び乗る。
地面を抉り、砂煙を巻き上げて、クウハの操る装甲車が門との距離を詰めていく。
「何か来たぞ! 門にぶつかる!」
「鉄砲玉か? どこの組のモンだ!?」
「1台でカチ込んでくるたぁ、ドエレー“COOL”な真似するじゃねぇか!」
2人の接近に気が付いたのか、門の向こうから男たちの怒声が響いた。
鉄の門に守られているという安心感があるのだろう。大爆発の後だと言うのに、男たちの声音には余裕の色が滲んでいた。
だが、それは誤りだ。
あまりにも現状把握が出来ていない。
「何のために爆破したんだっつー! なァ!?」
「やっちまいなー!」
門を真正面に見据え、クウハはアクセルを強く踏む。
そして、本日2度目の轟音が響く。
轟音に続いて、数人の悲鳴。
運が良いのか悪いのか。至近距離で、傾いた門を駆け上がっていく装甲車を見た者がいるのだ。
かくして……
誰にも、何にも遮られることなく、クウハときゐこは屋敷の庭へと跳び込んだ。
さぁ、仕事の始まりだ。 - 執筆:病み月