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幕間

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幕間

関連キャラクター:九十九里 孝臥

白紙の予定
 着替えを済ませた弦月は孝臥の部屋で髪をくくってもらう。別に自分でもできるのだが、孝臥に任せた方が綺麗なのと、孝臥が喜ぶのでやりたいようにやらせている。
 孝臥の部屋でいつものように椅子に腰かけて、ぼんやりと周りを眺める。
 が、今日はひとつだけ気になることがあった。
「あれ、カレンダー」
 弦月が見つけたのは、ほかには書き込みがあるのに今日――つまるところ8月23日にだけ書き込みのないカレンダー。
 別に期待していたわけではないが、それでも好きな人のカレンダーになにも書き込みがないのはやや悲しい。いや、大分悲しい。
「ああ、これか?」
「そうそう。今日俺のこと祝ってくれてるのに、書き込みがないなって」
 なぁ? とおどけて肩を組みながら孝臥の方をみると、やや照れたように頬をかきながら目をそらされる。
 そんな様子が見られただけでも満足ではあるのだが、無意識にそれ以上に喜ばせてくれるのが孝臥という人間だ。
「文字だと目が滑るから……」
「ん?」
「だから、ほら。一ヶ所だけ白いと目立つだろう?」
 他の日付などどうでもいい。けれど目を配れば、ごみ捨ての時間を書き込んであえて目が行くようにされていた。工夫だ。
「へえ……」
「でも、書いてる方がよかったか?」
「いいや? 忘れてて今おもいだしたんじゃないか、って不安になってな」
「まさか、そんなことあるわけないだろう?」
 今から買い出しに出ようとしているのだから、と笑えば弦月も頷いて。
「今日は俺の日だからな。孝、俺の無茶振りについてくる用意はいいか?」
「ほどほどにしてくれよな。財布の都合だけはどうしようもないけど、それ以外なら」
「ほんとか? ならうーん……ま、思い付いたら声をかけるか」
「ああ。そうしてくれ。叶えられる限りは叶えたいと思ってるよ」
 今日は快晴。夏の暑さはしつこいくらいの陽気でイライラしてしまうけれど、だれかの誕生日――ましてや大好きな弦月の誕生日ゆえに晴れているのだと考えればなにも嫌ではない。単純なものである。
「あ、そうだ。あそこのソフトクリーム屋さんで何か買わないか?」
「暑いからか?」
「いや、気になった」
「ふふ、そうか。何味にしよう」
「俺はチョコとストロベリーのやつにする」
「じゃあ俺はキャラメルとバニラにしよう」
「あとで一口くれるよな?」
「……っ、し、仕方ないな」
 ねだられたのだから仕方ない。胸内を落ち着かせるためにため息をついた孝臥は、手を振って自分を呼ぶ弦月の元へと走ったのだった――
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