幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
( ‘ᾥ’ )お師匠といっしょ
( ‘ᾥ’ )お師匠といっしょ
関連キャラクター:リコリス・ウォルハント・ローア
- 月が綺麗な夜でした
- 「お師匠、お師匠! すっごーくかっこいいよ!!」
目の前には大好きなお師匠が少し照れくさそうに頬を掻いていた。
いつもの白いコートじゃなくって、ボクが選んだ軍服っぽい白い浴衣!
お師匠はかっこいいからなーんでも似合っちゃう!
「ありがとう、リコリスさん。しかし私には些か華やかすぎやしないかな?」
「そんなことないもん! お師匠は世界で一番かっこいいもん!
こんなにかっこいいのに……きれいなおんなのひとといっしょに歩くんだ……( ‘ᾥ’ )」
「ふふ、そうだね、美しい女性とのデートは心が躍るね」
「もう~~!」
残念だけど今回お師匠の隣を歩くのはボクじゃない。
この後お師匠はきれいなおねえさんと夏祭りデートに行くんだ。ボクの選んだ浴衣を着て!!
むっすりほっぺが膨らませたら、お師匠は困ったように笑ってボクを撫でてくれる。
この顔と手がボク大好き! でもやっぱり面白くない。
面白く、無い。
●
「お師匠かっこよかったでしょ。あの浴衣ボクが選んだんだよ」
目の前の女は「ひっ」と情けない声を上げて後退っている。お師匠といた時はうんざりするほど甘ったるい声を出して擦り寄っていたくせに。
――ああ、本当に腹が立つなぁ……。
「……あ」
はっと我に返ったときには女は額に穴を開けてぐったりとしていて、息はしていなかった。
確かこの女はお師匠の標的だったはずだ。うっかりしていた。
とりあえず、死体の処理を――。
そう思ったけど、コツコツとこっちに近づいてくる足音が聞こえてきてボクは急いでその場を離れた。
●
「まさか、こうなっているとはね」
何時まで経っても標的が顔を出さないので、私は様子を見に行くことにした。
そして『標的だったもの』を確認した。額に開いた穴が既に獲物の命が失われたことを証明している。
(リコリスさんだね)
彼女はフードを被ると別人のようになる。
普段は待てができるいい子なのだけれど……今回は抑えが効かなかったかな。
懐から無線機を取り出した。
「私だ。すまない任務に失敗してしまった。いや、逃がしたわけじゃない」
疑問符を浮かべるオペレーターに淡々と告げる。
「どうやら可愛い赤ずきんが、私より先に狼を食べてしまった様だね」
それにしてもどんどん銃の腕が上がっている、素晴らしい。
愛弟子の成長が嬉しくて私は口角を上げた。
- 執筆:白