PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

我(わたし)の考えた最強の(呪文・詠唱・必殺技)!!!!!!

関連キャラクター:善と悪を敷く 天鍵の 女王

カルド・ローエンの勇気ある行動。或いは、今日を生き延びろ…。
●ある村の戦い
 カルド・ローエンは鉄帝出身の研究者だ。
 医者の家系に生まれた彼は、20歳までの人生を医学の研鑽に費やした。
 その後、彼の優秀さに目をつけたとある企業にスカウトされて……彼の人生は大きく変わる。
 人生の転機とは、本人の意図せぬタイミングで、本人の望まぬ方向へと転がることもある。それが天の定めであると納得できるのなら良いが、悲しいことにカルドはそういう性質ではなかった。
 けれど、今、この瞬間……カルドは生まれて初めて神へ祈った。
「あぁ、どうか……誰か、この村を救ってくれ。気の良い彼らを死なせないでくれ!」
 血塗れの白衣を纏ったまま、カルドは地面に膝を突き、首を垂れて祈りの言葉を、切なる願いを口にする。
 彼の背後には、怯えた様子で肩を寄せ合う老若男女の姿があった。
 カルドの正面には、硬く閉ざされた木の扉。
 村の中央にある集会所には、50名を超える人間が集まっている。
「カルドさん。アンタ、見ず知らずの俺たちのために祈ってくれるのか? いい奴だな、アンタ」
 村人の1人が、日に焼けた肌の農夫が言った。
 カルドは瞳に涙を浮かべて首を振る。
「違う。そうじゃないんだ。あいつら……あのアンデッドたちを作ったのは僕なんだ。この村が襲われているのは、僕の責任なんだ」
 涙を零し、カルドは叫んだ。
 研究機関にスカウトされて数年間、カルドはひたすら死者の蘇生に関わる実験をさせられた。遺体を解体し、繋ぎ合わせ、時にはカルドの目の前で“新鮮な遺体”が作られたこともあった。
 そんな実験を繰り返した結果、出来上がったのは“アンデッド”。
 ただ本能のままに動き、生者を喰らうだけの哀れな怪物だ。
「僕を研究所から逃がしてくれた人がいる。多分、その人は死んじまった。僕のせいだ……そして、きっとアンタたちも……僕があんなもの作ったから!」
 泣き叫ぶカルドを、村人たちは憐れむような目で見つめた。
 死者を冒涜するような真似をしたカルドを、村に危険を招き入れたカルドを許してやることは出来ない。
 けれど、泣き叫ぶカルドを、後悔に咽ぶカルドのことを、これ以上責める気にもなれなかったのだ。
「……僕には戦う責任がある。行かなくちゃ……」
 ゆらり、と。
 まるで幽鬼のような表情で、カルドはゆっくりと立ち上がる。
 それから彼は、壁に立てかけられた農具を手に取ると、ほんの僅かに扉を開けて、家屋の外へと出て行った。

 1体、2体……数えきれないほどに大量のアンデッドがそこにいた。
「か、かかってこい! 僕が相手だ! 僕が……僕がやらなきゃ! 死んでいった君たちや、逃がしてくれた人に報いるためには、戦わなきゃ!」
 動きの鈍いアンデッドとはいえ、その数は悠に100を超える。
 カルドはきっと死ぬだろう。
 しかし、1体でも多くのアンデッドを道連れにすれば村人たちが生き残る可能性は上がる。
 震える脚を拳で殴った。
 農具を高く振り上げて、カルドは1歩、前へ出た。
 恐ろしい顔をしたアンデッドが、カルドに気付く。
 血を吐きながら、白濁した目でカルドを見やる。
「あ、あぁあああああ!」
 絶叫し、カルドは地面を蹴飛ばした。
 その瞬間だ……。

「我は求め、訴える。汝、我が眼前の怨敵を、その弾丸でもって掃討せしめる者なり! 来たれ! 顕現せよ! 正確無比なる魔弾の射手、ザミエル!」

 歌うような女の声が耳朶を擽る。
 次いで、響き渡る銃声。
 眼前に並ぶアンデッドたちが、次々と弾丸に撃ち抜かれ、倒れた。
「……え?」
 カルドは目を丸くして、その光景を眺めている。
 銃弾を放つのは、両の手にライフルを携えた紅い髪の女であった。否、正しくは女の霊というべきか……半透明で、脚は無く、狙いを付ける様子も見せずに嵐のような勢いで弾丸を撃ち続けているのだ。
 ライフルを構えた女の背後に、白い影が立っていた。
「あ、あんたは!? まさか、本当に……神の使いなのか!」
 カルドは問うた。
 呆れたように、或いは愉しむように白い影は笑った。
 影……小柄で白い女である。
 白い髪、白い肌。月明かりを背に、女は腕を高く振り上げる。
「我の名前はレジーナ。レジーナ・カームバンクル……神の使いなどでは無いし、汝の願いに応えてこの場に馳せ参じたわけでもないわ」
 そう言って、レジーナと名乗った女はまるで指揮をするように上げた腕を虚空へ素早く走らせた。
 レジーナの指揮に従うように、赤い髪をした霊が四方へ弾丸をばら撒く。
 嵐のように苛烈で。
 針の穴を通すかのように正確な射撃。
 きっと、自分は救われた。
 村人たちの命もきっと助かるだろう。
「誰でもいい。ありがとう……すまない、ありがとう」
 地面に膝を突き、泣き崩れるカルドの様子を一瞥し、レジーナはくすりと小さな笑みを零したのだった。
執筆:病み月

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