幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
我(わたし)の考えた最強の(呪文・詠唱・必殺技)!!!!!!
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関連キャラクター:善と悪を敷く 天鍵の 女王
- ハシシ・ロコウの長い戦い。或いは、1発の弾丸…。
- ●たった1発
ハシシ・ロコウは猟師であった。
生まれは鉄帝。1年を通して雪の溶けない山奥の小村。
熊獲り猟師であった祖父と父の教えを受けて、幼い頃から狩りの技術を学んで来た。
やがて、熊との戦いで祖父が息絶え、父が息絶え、ハシシ1人だけが残された。ハシシは1人になった後も、熊を狩り続けた。
中でも、体長4メートルに迫る巨大な灰色熊“青目”との戦いは激闘と言えた。その名の通り、澄み渡る海のような青い目を持つ怪物熊だ。
ハシシは肋骨を3本と、右手の指を2本失いながら“青目”を倒すことに成功。本来であれば熊の肉は食すものだが、ハシシは強敵に敬意を表すという意味でも、それを自然に還すことにした。
代わりに、皮だけを激闘の証として剥ぎ取り、持ち変えることとした。
それが、今から3年前の出来事だ。
以来、ハシシは皮の無い熊のアンデッドに昼夜を問わず、追いまわされているのである。
雪山を進むハシシの頬はこけていた。
目の下には黒い隈。唇は紫色に染まっているし、呼吸は浅い。
一目みて、すっかり疲弊していることがよく分かる。だが、それでもハシシは歩みを止めることはない。ハシシが足を止めるのは、明け方の4時頃から8時頃までの間だけだ。
それ以外の時間、ハシシはライフルを構えたまま歩き続ける。
歩き続けていなければ“青目”に追いつかれるからだ。
「ちくしょう! 来やがった!」
ハシシは膝を地面について、ライフルを構えた。
それから、視線を左右へ素早く走らせる。
「来た! 来たな! 来てみろ! 1発だ! また、1発で撃ち殺してやる!」
血走った目で見据えた先には、皮の剥がれた熊がいた。
腐敗した筋繊維が剥き出しになった隆々とした体躯。眼球は既に腐り落ち、身体の何カ所かは白骨化している。
そのような無残な有様でありながら、青目は未だに動き続けていた。
死ねばそれまでのはずなのに、アンデッドと化して動き続けていた。
「命を奪った俺が憎いか!? それとも、もう1度、俺に殺してほしいのか!」
ハシシは怒鳴った。
当然のことだが、青目からの返事はない。
この問いも既に何度目だろうか。
熊が地面を蹴って駆け出す。ハシシはライフルを正面に構えた。
引き金に指をかけ、呼吸を止める。
ライフルに込められた弾丸は1発。
1発あれば、どんな生き物だって仕留めて見せる。それが、祖父と父から伝えられた狩りの極意だ。そして、自身に課す覚悟の現れでもある。
1発で仕留めなければ獲物が苦しむ。獲物を苦しめるぐらいなら、引き金を引くな。
「今度こそ、きっちり終わらせてやるからな」
そう呟いて、ハシシはライフルの引き金を引いた。
銃弾が、青目の眉間を穿つ。
だが、それだけでは止まらない。銃弾の1発程度では、アンデッドは息絶えない。
青目が駆ける。鋭い爪を振り上げる。
体力の限界だったのだろう。ハシシは意識を失って、雪の上に倒れ込んだ。
青目の爪が、ハシシの頭蓋を抉る……その直前だ。
「──いと聖なる魔界の太公。暗く安らかな王国と、死者の眠る帝国。王権が終わり、世界が終わり、けれど安息は永久に」
祝詞が響き、青目はぐらりとその場に倒れた。
その身に纏わる瘴気が晴れて、後には熊の遺体が残る。
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)の手により、アンデッドが送られたのだ。そのうち、遺体は自然に還る。
「長い戦いは、これで終わり。まったく、見事なものでした」
そう呟いて、ハシシをそっと抱き起す。 - 執筆:病み月