幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
窓際族生存記
窓際族生存記
関連キャラクター:回言 世界
- 臆病者への手解き
- 年月を貪ったアイスクリームの如くに、莫迦げた液状を好んでいる。
ノンブル、ルビを数えよ。
タイプライターの軋む音が悲鳴に聞こえたのは気の所為ではなかった。戯言だけを紡ぐ、身勝手な空気に只事ではないとオマエはゴクリと呑みくだす。何処かから這入り込んできた何者かの臭気が、ぶつ、と粘膜を突き破るかのザマだ。回転流として見做された赤色のインクに適度な意味を持たせる。ああ、知っている。俺は理性と称した暴力で以て、この世界を認知している。並行して続く筆のアトを追いかけて決して、混迷とはいかないのだ――鏡面に映り棲んでいる何処かの化け物にヴェールを与える、そろそろ城壁から抜け出してきたら如何か。まるで怯えているのが、脅えているのが獣のように思える。濁り尽くした眼球にカトラリーを突き刺した事はあるか? あるわけねぇじゃねえか、クソッタレ――随分と口が悪くないか。これでは小動物だって逃げ出してしまう。
境界産アーカムと呼ばれる世界を『捲った』のはひどく『正気じゃなさそうな』案内人に出会ったが故だ。ここは出遭ってしまったと表現するのが一番、最悪に近しいだろう。宇宙空間めいた頁に引き寄せられたのは事実で、覆せない本の虫の性質だが、幾らなんでも『罠』が過ぎるのではないか。病的な執着心を見せつけられたなら、魅せられたかの如くに焼け付く脳髄――面倒事に打ち当たったのだ、首を突っ込む他にない。
絵に描いた虎とやらの方がきっと簡単に『引き摺り出せた』に違いない。先程から引き籠もっている、この世界の主人公とやらを連れ出さなければならないのだ。ああ、さもなくば、世界は停滞、エンディングを迎えてしまう――俺さ、アンタみたいな奴を見ると疼くんだよ。外の世界には美しいモンや愉しいモンがたくさんあるって知らねえのか? 嫌われモンには嫌われモンの『オモシロサ』ってのがあんだよ――同類だ。俺と『これ』は結局のところ、忌々しいほどに同類なんだ。夢想と現実の狭間で虚構に塗れている……。
――ゴツゴツと、荒々しく、されど護謨質な掌を、うすれ硝子に突っ込む。頸を左右に揺らしているナニカを境界跨がせ『惹き』寄せた。送り迎えをする気などmmもなかったが、何もかもは気分次第だ。なあ、少しは感謝してくれよ、貧乏籤を貰ってやったんだ。
感涙、遠吠えが城内に反響していく。廃れ、くされの中心で冒涜的な所業に没頭した。アウトサイダーの頭垂れに主は眼鏡を曇らす。
――妖精さん、妖精さん、地下に書斎が在るのです。
噫、其方側に身を浸すのも悪くはない。
コツン、コツン、五体投地――山と積まれたハード・カバー、螺旋つむぐ文字列。
よろしく。 - 執筆:にゃあら