PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

窓際族生存記

関連キャラクター:回言 世界

幾千の物語
 境界図書館には様々な蔵書が所狭しと本棚に詰め込まれている。
 それは勇者が姫を救う王道の噺だったり、星座の神話だったりどこかの怪奇譚だったり。
 世界はぱらぱらと頁を捲る。ここの蔵書はあらかた読みつくしてしまった。
 否、正しく言えば「体験し尽くしてしまった」というべきだろうか。
 境界図書館に納められている書物は唯の書物ではなく、その書物の世界へ文字通り飛び込めるという代物だ。そして飛び込んだ先で依頼をこなす、という体で物語を体験することが出来る。
 そんな境界図書館に引きこもるのが世界の日常だった。
「お前さんくらいだぜ、そんなに境界図書館(ここ)に来るのはよ」
 蔵書の整理をしていた黒衣の境界案内人、朧ともすっかり顔なじみだ。
 その表情はいつも通り見えないが、きっと布の下では緩やかに笑んでいるのだろう。
「まぁ、性には合ってるかな」
 目線を躱すことなく世界は片手を挙げた。それを気に留める風でもなく朧は蔵書の整理を再開する。
「そういや……新しい依頼が入ったが、行くかい」
 漸く世界が書物から顔を上げ、朧に向き直った。
「――内容は?」
「そうさね――」
 こうしてまた世界は異なる世界への扉を潜ることになるのだ。
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