PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

窓際族生存記

関連キャラクター:回言 世界

急がば回れ
 頁を捲ったのが運の尽きだった、眼鏡を落っことした時のように、眼球を転がしてしまった時のように、あらゆる秩序が崩壊して、莫迦みたいに似たようなことを反芻する。ああ、俺はまたしても『とんでもない』ところに来てしまったようだ。名前の通りに回言と、名前の通りに世界諸共、くるり、くるりとドードーめいてレースを行う。境界案内人はこの世界の事をなんて説明していたのか。忘れるものか、忘れる筈がない、一度、崩壊の危機に陥っている世界の事を如何して忘却する事が出来ようか。嘲笑う馬とも蝙蝠とも解せない、宙をいく生物が空を認識出来ずにいる。おかしな事だ、可笑しな話だ、飛ぶ命が地面に激突するなんて――二転三転とする景色に、愈々、俺もやられそうになった。
 もしも世界が、なんでもかんでも、ぐるぐる廻っていたら貴方は如何する? 頁を捲る前に境界案内人がこぼした科白だ。いや、そんな、荒唐無稽な事を謂われても、俺には想像出来ないし、そもそも、そんな世界、成立しないんじゃないか。返答してはみたものの、俺は薄々わかっていたのだ。その科白が文字通りに成立してしまう物語の存在を、世界の沙汰を。まあ、貴方に説明する事はそんなに『ない』わ。あの世界は既に君達に救われているんだし、観光気分で足を運ぶのが正解なんだから。ただし、決して深部まで行かないこと。下手をすれば迷ってしまうから……。俺が今、一番聞きたいのはタイトルだ。……そう。仮なんだけど良いかしらね? ぐるぐるしてるのよ。ぐるぐるしている世界――。
 天地がひっくり返る、なんて比喩があるが、この世界ではそれが『当たり前』なのだとよく解った。天も地も、何もかも、ヒトサマに至るまで無茶苦茶にぐるぐるしていたのだ。歩くのもやっとな状態だ。違う。一歩でも進もうものならば、別の方向へと身体がブレてしまう。おいおい、これが通常だって。いつも通りだって。ふざけている。いったいぜんたい、他のイレギュラーズはどうやってこの世界を救ったと謂うのか。取り敢えず通りすがりの誰かさんに声を掛けてみる――最近越してきたばかりなんだけど。
 やあ、今日もいい天気だね。何がいい天気だ、ブラックホールよりも目が回っているじゃないかよ。いやね、ちょっと前に世界が崩壊しかけたんだけど、やっぱり回転する方向がいけなかったんだ。右か左かは本当に重要な事なのさ。だから、君も止まっていないで、最初はゆっくりで良いから街を回ってごらん。グローブジャングルやらターンテーブルやら、色々と置いてあるからさ。そうそう、子供達もきっと歓迎してくれるよ。
 こんな世界で本を読めるかよ、気分が悪くなりそうだ。
 気分転換に公園へと足を運んだ――歩く練習だけで結構な時間を費やした――きゃっきゃと子供達が騒いでいる。中心にあるのは、成程、誰かさんが呟いていた大人気な遊具か。……看板が立っている。野球をするな、とか、サッカー禁止、とか、そういう注意書きかと思ったが如何やら違うようだ。なになに……【逆方向への回転禁止】……理解したらダメな気がする。いくら俺のギフトが、並行心が、こういうのに強かろうと。
 お兄さん、お兄さん、ボクたちと遊ばない?
 ……まあ、こういう比較的平和な世界こそ、大切にすべきなのかもしれないな。
 残業たっぷりな何処ぞよりは善いものだ。童心に帰って、ぐるぐる、ぐるぐるぐる……。
執筆:にゃあら

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